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第三章 乱 台頭(2)

 翌朝、グラシアスの屋敷を訪れた司祭の後ろには昨日の男が立っていた。

 「この男、ゴルディオスという・・昨日、酔った兵士に絡まれた私を助けてくれた。

 重用してください。」

 司祭が頭を下げる。

 グラシアスは値踏みするようにその男を眺める。

 背丈はそれほど大きくはない。が、がっしりとした四角い体躯を持っている。そしてその眼・・突き刺すような強い光を放っている。

 「三十人預ける。」

 グラシアスは言葉と共にゴルディオスの視線から逃げるように司祭に目を移した。

 「で、今日の用とは・・・」

 部屋を出て行くゴルディオスの後ろ姿を目で追いながら、司祭に尋ねる。

 「ヴィンツの七国が動いております。

 賢者に率いられたそれぞれの国が一つに纏まり、テアルを中心とした国になろうとしています。」

 「ヴィンツは攻めぬぞ。賢者に率いられた強国だ・・分が悪い。」

 「それで結構です・・今は・・・」

 「今は・・・」

 「七賢者の動きは私にも掴めません。まるで霧の中に包まれたかのようです。

 ですが、隠密裏に動けば動くほど何処かに隙が出る。その時を狙います。」

 解った。と言うようにグラシアスが頷く。

 「ただ、放っておけばその隙さえなくなる。」

 「で・・」

 グラシアスが患わしそうな眼で司祭を見る。

 「七賢者はまずロゲニアと結び、その上でヴィンツの外郭として二つの国を創ろうとしています。

 それを妨害して貰いたい。」

 「では・・国ができかけたら叩こう。」

 「それでは遅すぎます。まだ芽の内に襲う。それを繰り返していただきます。」

 「他の戦いもあるぞ。」

 グラシアスは怒気を含んだ声を上げた。

 「他を置いても・・・」

 司祭は頭を下げ、そして死人(しびと)のような目でグラシアスを見上げた。


 司祭がケントスに去るのを確認するとグラシアスは自分の側近を集めた。

 「儂はヴィンツとは戦わんぞ。」

 グラシアスは荒れた。

 「七賢者が率いる軍に俺達が勝てるわけがないだろうが。」

 「しかし・・・」

 「解っている。あの忌々しい司祭め。

 意に従わなければ俺達を潰す気だ。」

 グラシアスは暫く考え込んだ。

 「あの男・・ゴルディオスだったか・・あいつを使おう。あの目、どうも儂は好かん。

 それに司祭が送ってくるという兵・・それをつける。

 そうだ・・それがいい。」

 グラシアスは自身の言葉に一人で納得し、頷いた。


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