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第三章 乱 台頭(1)

 ランドアナ高原の南東の端。そこに小さな国。国の名はガリア。そしてその国の首領はドーク、今はグラシアスと貴族風の名に変わっている。

 ガリアは特殊な国だった。戦いだけを目的とし何の生産もしない。

 女を囲い、金や食料は近隣の村から奪ってくる。

 たまにやって来るフランツの軍を追い返し好き勝手に国を保っている。

 そんな国の首領が女を抱く屋敷の庭に荷馬車の一隊が入って行く。

 荷物を積んだ馬車が一両、檻の中に若い女を満載にした馬車が二両。その後ろを馬に揺られケムリニュスの司祭が続いている。

 「(うるさ)い奴が来たな。」

 グラシアスはバルコニーからその様子を眺めていた。

 司祭は目通りを許され、今、首領グラシアスの前にいる。

 「物資が一両。中身は金銀・食料と武器、防具。女が二雨。でございます。

 宜しく御収納ください。」

 司祭が(うやうや)しく頭を下げ、

 「男達はいかほど集まりましたかな。」

 「七・八百」

 「女は・・・」

 「百足らず。

 下役共は不満を訴えておる。」

 「娼館でも入れますか。」

 司祭が腕を組む。

 「で・・何をせよと・・」

 「華々しく暴れていただきたい。」

 「相手は。」

 「何処でも構いません。フランツでもヴィンツでも。」

 「人が足りん。」

 「暫く私の所の戦士を預けましょう。

 その間に国力をお上げなされ。

 明日また伺います。」

 司祭は屋敷を出て、町中を歩いていた。そこは町とはいえず、逆茂木に囲まれたただの雑踏。そこを柄の悪そうな兵士達が歩き回っている。

 昼間から酒でも飲んでいたのか千鳥足の三人組の兵士の肩が司祭の肩に当たり、よろめく。

 「てめぇ。どこに目をつけてやがる。」

 その男が毒づき司祭に殴りかかる。

 その拳を司祭がユラリと躱す。

 「この野郎・・」

 男が剣を抜き、周りに居た仲間もそれにつられたように剣を抜いた。

 司祭に護衛は居ない。にもかかわらず司祭は身構えるでもなく剣の前に身を晒している。

 「舐めやがって。」

 先頭の男が剣を振り上げる。

 その瞬間・・

 「痛てぇ。」

 男は剣を取り落とし、額を押さえた。

 男が辺りを見回し、自分に小石を投げつけた犯人を捜す。

 そこへ喧嘩見物の人垣をかき分け、筋肉質の四角い体の男が現れた。それに対して剣を拾い直し男が毒づく。

 「止めろ、ラング。」

 一緒に居た後ろの男がその男の肩を引く。

 「相手が悪い。」

 「何だと。」

 ラングと呼ばれた男の鼻息が止めようとする仲間に向く。

 「お前も名前は知っているだろう・・ゴルディオスだ・・こいつは容赦を知らないぞ。」

 「ゴルディオス・・そいつが何のものだ。」

 斬りかかるラングが宙を舞い、地面に叩きつけられた。

 大の字に地面に寝るラングの右手首を踏みつけゴルディオスが残った二人を睨めつける。

 その気迫に押されたのか二人は剣を納め、胸の前で手のひらを晒す。

 それを見てゴルディオスは地面に倒れたラングに馬乗りになり顔を殴り始めた。

 殴る、殴る、殴る・・・

 最初は毒づいていたラングの声が哀願に変わり、それから悲鳴に変わり、そして遂に聞こえなくなった。

 あまりの凄惨さに誰も手を出せず遠巻きに見ているだけだった。

 殴り続けるゴルディオスの肩を司祭が叩く。

 ゴルディオスの恐ろしい眼が司祭を向く。

 「もうよろしい・・助かった・・これで何度目かな。」

 言いながら司祭の手がゴルディオスの手首を掴む。さして力を入れているようには見えないが、殴り続けようとするゴルディオスの手が動かなくなる。

 「私と一緒においでなさい。」

 司祭が誘いを掛け、それに促されるようにゴルディオスが立ち上がった。


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