第三章 乱 デビルズ・ピーク(13)
ランダが先に立ちそれに寄り添うようにエミリオスが並んだ。
「幾つか土産も貰ったことだし私も行くか。」
「火鼠。」
アレンが火ネズミを呼び、暗い洞窟を照らす。その先に一角の兎が数匹。それに向けエミリオスが走り二・三匹倒したところで、
「痛・・・」
脚を押さえ尻餅をついた。
「何事だい。」
ランダが悠然と近寄る。
そこへ地の底から角が伸びる。
「ほう、私のもう一つの目的、トウテツのようだね。」
ランダはその角を掴み、怪物を土中から引きずり出した。
トウテツがいなくなった穴の中に何かキラッと光るものが見える。
ザクロスがその穴に手を突っ込むと、その光るものが指先を刺し、流れる血がその光るものにかかる。それをものともせずその光るものを引き出した。
その姿は槍。
「見せてごらん。」
ランダがそれを手に取る。
「グラーシーザ。魔をも突き通す。
いい槍だよ。」
ランダはその槍をザクロス投げた。受け取ったザクロスが槍を中空に突き出す。シュッと鋭い音を立て、槍の穂先が空気を引き裂いた。
「そろそろ戻ろうか。」
ランダがみんなを見渡す。
「まだだ・・智恵の実が残っている。」
「そうかい、そうかい。あんたも意外と欲深いんだねぇ。」
と、ランダがワーロックを見る。
「婆さんと犬共はここに残していくよ。
そうそう・・エミリオスもね。
それともお前が治してやるかい。」
ランダが鋭い目でレーネを見る。
「解ったわ、私も残ります。」
「俺も残る。この二人の護衛にな。」
ザクロスがランダとレーネの間に割って入った。
火鼠が照らすだけの薄暗い道を淡々と歩く。その頭上から何かが落ちてくる。
「蛇。」
クローネがそれを斬り捨てる。
その先に無数の蛇が火鼠の炎に照らし出される。
「多いねぇ。」
ランダの言葉も終わらぬうちにワーロックが呪文を唱え出す。
「アスプ・・睡魔。その上、毒の息を吐く。」
ランダがみんなに注意を促し、それと同時に、音もなく青白い稲妻が暗闇をひき裂いた。それに当たり蛇が全て黒焦げになる。
「蛇・・と言えば・・・
あんた達は後ろに下がっておいで。ここから先は私だけで行く。合図が聞こえたらおいで。
それにアレン、火鼠で私の姿を照らすんじゃないよ。」
ランダはそれまでとは違って、急ぎ足で先へと進んでいった。
「出ておいで。あんただって事は解っているんだよ。」
ランダが暗闇に声を掛けると、ズルズルと音を立て何かが這いずって来る。
「ラミアだね。」
ランダが下半身が蛇の女を鋭い目で睨む。
そしてランダの体が倍ほどに膨らみ、本来の姿を現す。
その姿に向けラミアと呼ばれた蛇女が猫の前足の鋭い爪を伸ばす。だが本来の姿を採ったランダの肌は軽くそれをはじき返す。
ランダの肩の筋肉が盛り上がり、両手の爪が長く伸びる。長い舌が地を這いラミアの上半身に巻き付き、その舌先がラミアの乳首を舐め上げる。
ラミアの顎が宙を仰ぎ、喘ぎ声が上がる。
「どうだい・・私の所へ来る気はないかい。」
ランダがニヤリと笑う。
その顔に向けラミアの尾の一撃が飛ぶ。
だが、ランダはそれも意に介しないように愛撫を続ける。
「それともここでくたばるかい。」
ランダの舌の締め付けが強くなり、下顎から突きだした牙がラミアの頬を撫で、鋭い爪を伸ばした指が乳房を揉む。
「人の姿になれるかい。」
ランダの言葉にラミアがガクガクと頷く。
「黒い森に来な・・西の外れだよ。」
ランダは妖艶に笑い・・
「可愛がってあげるよ。」
ランダは長い舌を口の中に納めた。