第三章 乱 デビルズ・ピーク(2)
その頃、ザクロス達は何とか逃げ延びテアルに集結していた。ローグにレーネを紹介し、今後の行動を話し合った。その結果、ザクロスはクローネ、セク、それにレーネを引き連れてロゲニアにいるらしいエイゼルとガイを探し、ローグは残った者達を引き連れてスローズ達の後を追うこととなった。
二つに分かれた者達は再会を約し東と北に分かれた。
「もし。」
テアルを出ようとするザクロス達に一人の男が声をかけた。
「あなた方はサルミットでモアドスの兵達と戦っていたと言う方々では・・・」
その言葉に四人がさっと警戒の色を見せる。特にクローネは剣に手を掛けさえした。
その姿にビクッと身を震わせ男は後ずさりしながら、
「勘違いしないでください。私はモアドスの追っ手などではありません。」
と、震える声を出した。
「ではなぜ我らを知っている。」
セクが荒い声をあげ、それにザクロスが苦い顔をする。
「赤黒い鎧を着た戦士。その方がモアドスの兵を蹴散らしたのは有名なことですから・・・」
男は怖々と言葉を続ける。
「その方が建国のため、武器を探しておられるとか。」
一度剣から手を離したクローネが再び剣に手を掛ける。
ひえーと声を発しながらその男が後ろへ飛びずさる。
しかしなお、
「前にここを通った方々からそのことを聞きました。お気に障ったならばお許しを・・・」
男は自分の胸の前で手を合わせた。
ザクロスはクローネを手で制し、
「何のようだ。」
と、その男に尋ねた。
「私は武器商人のデフィンと申します。
あなた方の噂を聞きつけ私でもお役に立てるかと・・・」
「武器を買う金はない。」
「いいえ、武器を売るのが目的ではなく、あなた方の志に賛同いたしまして・・・」
「何がしたいのだ。」
「東の山に素晴らしい武器が眠っています。何年か前に私はそう聞きました。金になると思ったのですが、そこには魔物が巣くっているとも聞きました。その山の地図までは手に入れたのですが、私一人ではとても・・・
そこにあなた方の噂を聞きました。それでその武器はあなた方に差し上げようと・・・」
「武器は持っている。」
セクがブンと槍を振った。
「確かに・・しかしその武器は傷みませんか。特に噂に聞く黒い鎧の戦士様の戦い方では・・・」
「俺にその武器を取ってこいと言うのか。」
「いいえ、私が案内してその武器を貴方様のものにと・・」
「その報酬は何を望む。」
「私にも少なからず志はあります。貴方様方と一緒に国造りに参加させていただければ・・」
どうしますと言う顔でクローネがザクロスを見る。
「その武器とは何だ。」
「槍でございます。」
デフィンの言葉に、
「この槍、随分草臥れてきた。
だまされたと思ってお前の話に乗ろう。」
ザクロスは僅かに笑った。
「それでは出発の前に・・」
デフィンはザクロス達を連れだって歩き出し、暫くするとテアルの郊外に建つ見窄らしい木造の家に入っていった。そして、床板をバリバリと剥がして床下の暗がりに入っていった。
出てきたその手には大きな行李と三本の槍が握られている。そして、デフィンが行李を開け、
「槍が三本、剣が五本、斧が三丁、それに魔杖が一本有ります。
これらはあの山に棲む魔物を倒すために私が集めたものです。好きなものをお使いください。」
ザクロスはその中から一本の槍と一振りの剣を手に取り、
「魔物を斃す武器とは。」
とデフィンに訪ねた。
「通常の武器では魔物は斃せません。そこで私は魔物について研究を重ね、魔物に効果のあるものを探し出しました。それは梵字という文字が刻まれた武器。その刃を見てください。そこに刻まれているのが梵字です。」
「よく集めたな。」
「虚仮の一念です。」
ザクロスは手に取った槍と剣を、クローネは二本の剣を、セクは剣は今ので良いと言って槍を手に取り、その後にレーネが魔杖に手を伸ばした。
デフィンはそれを見て、
「それは魔術師が使うものでございます。」
と、声を掛けた。とその側から、
「いいんだよ、それで。」
と、ザクロスが笑った。
デフィンはそこに置き捨てられようとした武器に手を掛け、
「まだ使えます。小屋の裏につないだロバに背負わせて持って行きます。」
と、笑った。




