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第三章 乱 デビルズ・ピーク(1)

 産褥のレーネはハベトのところにおいて行ったがよかろう。というワーロックの言葉に従い、サイゼル達は三人でファナを探す旅を続けていた。

そんな中、三人はロゲニアの西端の山の麓の小さな村に着くと、そこの村人達が口々に助けを求めてきた。

 「あの山に毎年若い女を生け贄に捧げなければならない。」

 「今年もまた・・・」

 「それを助けに、女が独りで山に分け入った。」

 村人達は口々にそう言い、聳え立つ山を指さした。

 「あの山は・・・」

 ワーロックが訪ねる。

 「デビルズ・ピーク。」

 村人が答える。

 「助けに行きますか。」

 ワーロックの言葉に二人が肯いた。

「俺が一緒に行く。」

 斧を抱えた屈強そうな若者が三人の前に進み出る。

 「危ないですよ。」

 というワーロックの言葉に、

「道案内が要るだろう。」

 と、その若者は譲らない。

 「わかりました。それでは一緒に。」

 ワーロックは意外とあっさりと肯いた。

 それから四人となって山を目指す。その道々ワーロックはその若者に質問をしていく。

 「名前は。」

 「カダイ。」

 ぶっきらぼうに若者が答える。

 「あの山の名は。」

 「デヴィルズ・ピーク。」

 「何が居るんだ。」

 「昔から魔物が棲んでいた。」

 「魔物・・ではなぜここで生活している。」

 「爺さまの話じゃあ、昔はお山の魔物もおとなしかったらしい。

 だが、ボスポラス山に光が立ったころから違う魔物が棲み着いたらしい。最初の五十年ほどは魔物もおとなしかったらしいが徐々に暴れるようになってきた。それを押さえるために毎年生け贄を捧げている。」

「なぜ逃げない。」

 「無駄だった。」

 「無駄・・・」

 「俺もこの村から逃げた。だが魔物の呪いなのか、時が経つとこの村に帰ってきてしまう・・・俺だけじゃない・・皆もそうだ。

 悪くするとこの村以外の者までをも引き入れてしまう。」

 「どんな悪魔だ。」

 「わからない。山に入った者は誰も帰って来ない。ただ十二・三年前、たった一人だけ山から帰ってきた女が居た。その女が言うことには山羊のような奴の下で魔女達の宴が開かれていたらしい。」

 「魔女達の宴・・サバトか・・バフォメット・・・かも知れんな。」

 ワーロックが呻った。

 「いつもこの先に生け贄をおいていく。この縄を超えたら弱い魔物が現れる。俺達でもやっつけられる奴だ。」

カダイの言葉が終わらない内からピョコンと青いゼリー状の魔物が現れた。

「なんだこいつは。」

アレンがワーロックを見る。

 「スライム・・厚く柔らかい膜で覆われている。それさえ斬れば簡単に倒せる。」

 「行こう。」

 「まて、ほったらかしていると襲ってくるぞ。」

 歩を進めようとするヴァン・アレンをワーロックが呼び止める。

 「何が出来る。」

 「体にとりつき溶かす。」

 めんどくさそうにアレンが大ぶりのナイフを振り回しスライムを倒していく。サイゼルは剣を、カダイは斧で、それをワーロックは石に腰掛けて見ている。暫くの戦いで十数匹居たスライムはほとんどが倒され残ったものは逃げていった。

 「この先に祭壇がある。何時もそこに女をおいてくる。」

 「行きましょうか。」

 ワーロックが腰を上げる。

 「あれが祭壇だ」

 暫く進んだところでカダイが指さした。

 「あそこに何が出るか俺も知らない。」

 カダイが言うそばから辺りが暗くなり土が盛り上がってくる。

 「餓鬼のようですね。」

 ワーロックが軽く言う側でカダイが身を硬くして構える。

 「そんなに硬くならなくても大丈夫ですよ。

 サイゼル、頼みます。」

 そう言うとワーロックはカダイの斧を手に取った。

 「この先の戦いのために少し細工をしておきましょう。」

 サイゼルの光が餓鬼を消し去るわずかの間に、ワーロックはカダイの斧に一つの梵字を刻み込んだ。

 「さて、この祭壇に何が出てくるか・・暫く待ちましょうか。」

 ワーロックは祭壇に腰掛け、その周りでサイゼル達が警戒した。


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