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第三章 乱 旧友(6)

クローネ達は二人ずつ二組に分かれていた。

 「びくびくしないで。」

 クローネは相棒のセクに声をかける。

 「こそこそと隠れ回っているといつかは見つかるわ。

 それより堂々としていて騒ぎが起きてから逃げるのよ。それまでは問い詰められたら話はあなたがして。」

 クローネは敵の目も気にせず森の中を外へ向け歩いた。

「怪しい奴がいるぞ。」

 敵の声が耳に飛び込む。

 その声にセクがビクッと身構える。

 「心配しないで。私たちのことじゃない。でもいつでも助けられるようにしときましょう。」

クローネ達が声のする方に急いでいると、「火の玉だ。」という声とともにモアドス兵が慌てだした。その声に誘われ岩山を見ると、その斜面を五、六個の火まみれの柴玉が転がり落ちている。

 「今よ。」

 クローネは脱兎のごとく駆け、モアドス兵が集まっている中に斬り入った。

 二本の剣が舞い、数人の兵士を斬り捨て仲間二人の包囲を皆で協力して解いた。

 「固まって。これからが本番よ。なるべく騒ぎを大きくして。」

クローネ達四人はそこに円陣を組み敵を倒しだした。そこに次々と敵兵が集まり、ついに囲まれた。だがその一方を破りザクロスと一緒だった二人が駆けつけた。

 「西の山へ登れと・・・」

 ザクロスの言葉を伝えようとした男の脇腹から敵兵が持つ槍の穂先が突き出た。

 「しっかり。」

 クローネは一方の剣でその槍の柄を切り、そしてもう一方の剣で敵兵を斬り伏せた。

「ザクロスは。」

 「独りで行った。」

 「敵のただ中へ・・・」

 駆け出そうとするクローネを二人の男が抱き留めた。

 「ザクロスは大丈夫だと言っていた。とにかく西の山へ逃げよう。」

二人は負傷した男に肩を貸し、他の者達でクローネを引きずるように西の山へと向かった。

炎の玉が転がる。その後ろを手当たり次第に敵を槍にかけザクロスが走る。それにまともに立ち向かえる者はいない。矢も剣も槍さえもがザクロスの鎧を通さない。その体に傷をつけられるものは、ただ転がり落ちる炎だけだった。

 遠くで老女のかんに障る声が聞こえる。その声は「砦を攻め落とせ」とがなり立てている。その声に押されるようにモアドス兵は砦に向かう。それに逆らってザクロスは老女の声の方へと向かう。

 その姿に向かって老女が悲鳴混じりに呪を唱える。だが彼女を護る数人の衛兵をあっと言う間に突き伏せ、ザクロスは老女の口から出る炎の魔法の呪が終わらぬうちに彼女に槍をつけた。

「お前か。」

 ザクロスが老女を睨む。

 「呪文をやめろ。」

 言われるまでもなく老女の口は閉じている。

 「砦に向かった兵を戻せ。」

 「もう遅い。」

 老女は皺だらけの指で砦を指さし、嗄れた声を絞り出した。

 その指の先に燃え上がった砦の姿が見えた。 「くそ、間に合わなかったか。」

 それを見て、ザクロスが唇を噛む。

 「森の外まで付いてこい。」

 ザクロスは老女を引き立て、ゆっくりと歩き出した。

 「手を出すでない。」

 老女は震えながら必死で声を絞り出した。

 そして・・・

 「お前のその鎧、兜・・なぜ鉄を通さぬ・・・」

 と、ザクロスを見つめ、そして、暫くすると今まで以上に震えだした。

 「その鎧は・・・」

 「この鎧がどうかしたか。」

 森の端でザクロスは老女を放り投げ、そして憎々しげにその姿を見下ろした。

 「殺さないでおくれ。」

 老女はその姿を見上げ、手を合わせた。

 「生かしておけば、後の災いになる。」

 老女の血はザクロスの鎧に紅い染みを増やした。

周りのモアドス兵はその姿に圧され、手を出せない。それを尻目にザクロスはゆっくりと歩き去った。


 「コウは死んだ。槍に突かれて・・・それに怪我人も・・・一人は胸を斬られ一人は太腿を槍で突かれた。」

 西の山を登る途中で出会ったクローネがザクロスに告げた。

 「残ったのは六人。これからは一人も減らさずに新天地を目指す。」

 北に向け、山を登り山を下る。行く手はまだ長い。

 夜が更けても北に向け山中を進むザクロス達一行六人の目に仄かな明かりが見えてきた。

 「あそこで一夜を明かせると助かるな。」

 ザクロスの声にクローネが二人の男を連れて偵察に出かけ、暫くして戻った。

 「中年の女と若い女、それに赤ん坊が一人。」

 「掛け合ってきてくれ・・怪我人だけでも泊めてくれと。」

 クローネの報告を聞きザクロスが即座に言った。

 小屋に向かったクローネの松明(たいまつ)が大きく輪を描く。

 「怪我人二人と私は家の中に、後の三人は物置小屋に泊めてもらえる。」


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