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第三章 乱 旧友(2)

 「囲まれたようだな。」

 サルミットの山裾、岩の剥き出た谷の道を歩きながらザクロスが言い、それにローグが頷いた。

「どうするの。」

 村から彼等に着いてきたクローネが一緒に岩陰に潜みながら不安そうな声を上げる。

 それを目で制しザクロスが立ち上がる。

 「スローズの手の者か。」

その大音声に気圧(けお)されたか、矢を放とうとした者達の手が止まる。

 そこへもう一度、

 「スローズの手の者達か。

 ならば伝えよ、ザクロスが用あってきたと。」

 ザクロス達を遠く包囲していた者達がザワザワとざわめくのがわかる。

その中から一人の男が立ち上がる。

 「親分に何のようだ。」

 「ハッハッハッハッ・・・やはりスローズの一味か。」

 ザクロスの笑い声にその場にまた緊張が走る。

 「捕り方か。」

 立っている男が手を振り上げる。

 「待て待て・・俺たちはお前等を捕まえに来たわけではない。スローズに話があって来ただけだ。

 ケルノイのところで一緒だったザクロスがローグと共に来た。とお前等の親分、スローズに伝えてくれ。

 俺たちは奴が来るまでここで待っているともな。」

 再びザクロスは笑い飛ばした。

ザクロス・・ローグ・・男達がざわつき、さっきの男が声を張り上げる。

 「その名前に聞き覚えはあるが・・証拠は・・・」

 「そうか聞き覚えがあるか。ならばこの血に染まった鎧のことも聞いておろう。それが証拠だ。」

 その場が再びざわつく。それを押さえ指導格の男が、

 「親分に知らせる。ここで待て。」

 とザクロス達に云い、部下達を振り向いて、

 「包囲は解くな。」

 と大声を上げ、自分は岩が剥き出た谷底の奥の森へと消えていった。

 小一時間も待ったろうか、

 「ザクロスとかローグとかを名乗るやつは何奴(どいつ)らだ。」

 と大きな濁声を張り上げながら、左頬に刀傷を持った大男が足早に歩いてきた。

 「スローズ、生きていたか。」

 その姿に向かって先にローグが声をかける。

 「ローグ・・・お前も・・・」

 大男がローグに駆け寄る。

 その中にザクロスも加わる。

 「あの女は。」

 その輪の外、ぽつんねんと立つ女にスローズが顎をしゃくる。

 「クローネ、俺がやっかいになっていた村で剣術を教えていた。それが俺とザクロスの話を聞き、ついてきた。」

 「そういえば、用があると云っていたな・・まあいい・・今日のところは再会を祝おう。」

 そう言うとスローズは先に立ち、森へと歩いた。

 道々、谷の上には見張り小屋が見え、森に入ると木々に渡り(かけはし)が渡され自由に行き来できるようになっている。

 「この先だ。」

 森を抜けスローズ指さす向こうには小高い岩山がありその上にみすぼらしくはあるが頑丈そうな石造りの館が建っている。

 「何かの遺跡だったんだろうな、それを俺たちが改装して砦にした。」

 「何人いる。」

 笑うスローズにローグが訪ねる。

 「女子供、老人まで含めて二百人ぐらいかな。」

「子供や老人まで・・山賊じゃあ・・・」

 「山賊だよ。」

 横から口を挟むクローネにスローズが答える。

 「ではなぜ・・・」

 スローズは突然ザクロスの胸を拳骨でドンとたたき、

 「こいつに感化されてな・・弱い者、虐げた者を見ると我慢できなくなったって訳だ。」

 「まあとにかく砦を案内するよ。」

 スローズの言葉に従い砦の石壁の中に入ると、まず広い闘技場があった。

 「ここで戦士になるための訓練をする。

 その数は今のところ五十人足らず。

 そして・・・」

 さらに足を進めると幾つものテントが立ち並ぶ一角に出る。

 「ここが居住区。

 一家族に一張りのテントだ。」

 「家は。」

 「戦いになると木造の家は焼かれる。それよりもテントをたたんで砦の中に逃げ込んだがましだ。」

 「戦いがあるのか。」

 「たまにな。

 モアドスでの栄達を望む者達が手柄を立てにやってくる。

 今まではすべて撃退したがな。」

 「五十人足らずで・・・」

 「いや、攻めてこられれば、皆が戦う。」

「武器は足りているのか。」

 「残念ながら・・・だから、手近な石を投げたりする。」

 そして石造りの砦に入る。

 「よし歓迎の宴会だ。

 戦士達を集めろ。二人の英雄がきたとな。」

 それからは酒。


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