第三章 乱 捜索(1)
ファナ達はサイゼルが生まれた町タキオスの北岸に着いた。
そこでまず聞いたのが父、母の消息。二人はファナ達が町を出てすぐに離婚し、父は酒場での些細なことが基の喧嘩でならず者に刺し殺されたという。
母はどことも無く、姿を消し行方はわからないと聞いた。
傷心・・ファナは自分の育った家に帰った。その家は荒れ果て今にも崩れ落ちそうではあったがどうにか雨露はしのげた。
そこを拠点にサイゼルを探すことにした。
タキオスの北岸、そこには広大な農地が拡がり多くの農奴が働いている。
人買いに買われたのなら、農奴として売られている。そう考えたがこの一つ一つの農地をしらみつぶしに探すには、その数はあまりに多かった。
だが、ファナはサイゼルに瓜二つの少年、その子をローンと名付け、来る日も来る日も農場を歩き回った。
徒労のようなそんな行動が二十日以上も続くと、
「ファナ、諦めよう。」
と、突然クルスが言った。
「なぜ・・ここまで来てなぜサイゼルを探すのを諦めるの。」
「いや、サイゼルを探すのを諦めるんじゃ無い。たぶん・・ここには居ない。」
「どうしてそんなことが判るの。」
「毎日毎日、ローンを連れて歩き回る。サイゼルとローンは俺でも気付かなかったほど瓜二つ、もしここにサイゼルが居るなら当然噂になる。
だが、どこを回ってもそう言う噂さえ聞かない・・つまり、サイゼルはこの地にいない・・そう判断した。」
「・・・」
「私も同意見ですな。」
何かを言おうとするファナの声を遮り、パルミトラスがクルスの言に同意を表した。
「それじゃあどこに・・・」
「人・・それも男をほしがると言えば・・抗夫、鉄になる石を掘り出すルミアス。だがあの国は奴隷を買うようなことはしない。
次に考えられるのが、農奴。ここタキオスとモアドスが可能性が高い。
そして、争乱が起きそうな国での兵士。山脈の南ではグランツ王国。それに北の地域。全て。
さらに、己の命を的に金と歓喜を得る剣闘士の一団。
そんな所かな。」
パルミトラスがここで言葉を切った。
「その中から、どこに。」
「まずモアドスへ行こう。ロマーヌロンドを経由して。」
ファナの問いにパルミトラスが答えた。
ロマーヌロンドで剣闘士の一団の噂は聞いた。しかし、ファナはサイゼルは殺し合いはしないと言い張り、その後を追うことはなかった。
そしてモアドス。ここでも十日ほどの時間を費やしたがサイゼルの行方は庸として判らなかった。
その後モンオルトロスのすぐ南、グランツ王国に至った。
この国は国王の悪政により国情は乱れ、野盗の類いが跋扈し、それを取り締まらぬ国に反発し、住民の反乱があちこちで起きていた。国王サンソーはあろう事か、野盗を追うためでなく住民の反乱を押さえつけるために、今、かなりの数の兵士を必要としていた。
「サイゼルは武術は出来たか。」
「わかりません。長く離れていたから・・・」
ファナの答えにクルスもまたその横で肯いた。
「サイゼルはどこで人攫いに連れ去られようとした。」
「ガルスの屋敷の近くの森の中だと聞いています。」
「他の子達は良くそこに行ったのか。」
「いいえ、その森に入っていたのはサイゼルだけです。」
「そこには子供の気を引くようなものがあったのか。」
「別に何も。」
「それではサイゼルはそこで何をしていた。」
「わかりません。」
パルミトラスの質問にファナが一つ一つ答えていく。
「もう良いだろう。」
徐々に曇っていくファナの表情を察してかクルスがそれを止めに入った。
「修行・・かも知れんな。独りで・・・」
ぽつんとパルミトラスが呟いた。
「とにかく兵士の中を探そう。」
気を取り直すようにパルミトラスが立ち上がった。
今にも破裂しそうな空気が漲る中をサイゼルを探し回る。
「この子に似た子を見かけませんでしたか。」
兵達の野卑た好奇の目にさらされながらも
ファナは兵士の間を毎日のように歩き回った。
時にファナに手を触れようとする者も現れる。そんな時はパルミトラスとクルスがそんな者達を叩き伏せた。
そんな危険な目に遭いながらも、唯の一つとしてサイゼルに関する情報は集まらなかった。
「ここにも居ないのね。」
一月も経つとファナもあきらめの顔を見せた。
「剣闘士の一団・・・あれは・・・」
クルスがフッと漏らす。
「サイゼルは・・・」
「追いかけてみようや。」
異を唱えようとするファナの言葉をパルミトラスが遮った。




