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第七章 堕ちる(6) 進軍

 馬場に勢揃いした若者達は馬上のアリアスを見上げ、

 「発つか。」

 と、老婆が微笑みを与えた。

 アリアスは、はい。と笑い顔で返し、

 「“光の子”の去就は未だに解りませんがこの旗があれば・・・」

 と、蒼き炎の旗を手に表情を引き締めた。

 「それに北では大戦が始まり、これ以上の遅延は成りません。」

 「どう行く。」

 「先ずはフィルリアで同志を集め、バルバロッサを叩きながらオービタス山地を北上します。」

 「今さらバルバロッサを叩く必要があるのか。」

 「我等が出た後のここいらの安全を確保する為と、フィルリアで集めた者達の訓練の為。」

 老婆は頷き、それから。と続けた。

 「ルミアス、ロンダニアと廻り、参戦を促します。」

 「北へはどう入る。」

 「出来ればモアドスも訪れ、その参戦も期待したい所ですが・・時がそれを待ってくれるかどうか。」

 「間に合わぬ場合は。」

 「山地の隘路を越えて行きます。」

 「そこまでの期間は。」

 「三から四ヶ月を見込んでいます。

 ではお達者で・・・」

 「必ず帰ってくるんだぞ。」

 老婆はその後ろ姿に大きく手を振った。


    ×  ×  ×  ×


 その頃サルミット山脈の北では遂にケムリニュス正規軍がフランツとの本格的な闘いに入り、ガリヤはそれに荷担し、国の形態を無くしたヨークにも兵を出し、同じようにそこを狙うプリンツと直接対峙していった。それを隙と見たのかダミオスはガリヤに攻め入りここでも激戦が繰り広げられている。

 バルハドスの台頭により出口を無くしたロゲニアは現在は逼塞の状態にあるがこれもどう動くのか。

 一方、主国を離れたゴルディオスの軍は単独でバルハドスと同盟を結び、その力も得て一気にプリンツに攻め入った。

 教都ギャロに連なる集落を次々と阿鼻叫喚の渦に巻き込みその進軍が続く。プリンツはヨークとの国境に送り込んでいた兵を退き上げさせ教都の防衛に努めようとした。それを隙と見たかガリヤの軍がプリンツ国内になだれ込み大混戦となった。そこに現れたのがゴルディオスの軍。亜人の隊を先頭にガリヤもプリンツも飲み込むように突き進む。

 亜人の隊の先頭を行くのはトロール、手に持った鎖に繋がる大きな鉄球を振り回し少々の攻撃には怯まない。その後ろには体は小さいがすばしっこいゴブリン、手にした斧を使うよりも喰い付き、噛みちぎっていく。ダークオークの一隊は槍を振り回し手近な人間全てを叩き伏せ、突き殺す。それを統べるのが半獣半人のワーウルフ、その戦闘力は凄まじく、蛮刀を振り回して兵士たる人を叩き斬っていった。怖じ気を震い戦場を離脱しようと背を向けるガリヤの兵にはカッセルの隊が襲いかかる。

 途方もない殺戮の戦場を悠然と進む黒鎧の一隊、そこを逃れようとするプリンツの兵を突き殺しながらただ一条(ひとすじ)ギャロを目指して進み、翌日の昼過ぎにはこの一隊はギャロの城門を遠くに望む所まで達した。

 城門の前では殺戮の戦場を逃れたプリンツの兵が叫び、悲鳴を上げ、懇願している。が、城門は開かない。その一団に向け黒鎧の戦士達は鉄弓に矢をつがえた。

 何度にも渡り無数の矢がプリンツの敗残兵の頭上に降り注ぎ、兵士がばたばたと倒れていく。それでも城門は開かない。そこにもう一つの悪夢、全てを殺し尽くした亜人の部隊が到着した。まだ腹を空かしているのか、ゴブリンとダークオークが生きていようと死んでいようと構わずかぶりつく。その中を割ってトロールの鉄球が城門を叩く。がミシミシと音はするが頑丈な門扉は揺るがない。

 「お止めなさい。」

 頭上から女の声、と共に何かが落ちてきた。

 「教皇スワージの首はこの通りよ。」

 それは切り落とされたスワージの頭だった。


 ゴルディオスは凱旋将軍のようにギャロの門をくぐった。そこに待っていたのは濃い灰色のローブに身を包んだ司祭と、美女の姿をした凶人ブラックアニス、ゼイダ。

 「見事に落としましたな。」

 声を掛ける司祭の後ろには数珠つなぎにされたサンクルス教の枢密卿達と司祭達。

 「この中は全て押さえてあります。

 どうぞ玉座へ。」

 ゴルディオスは(いざな)う司祭の後に続き教皇の間へと入り、華美な椅子に座った。

 「今日より吾は皇帝を名乗りこの国をカルドキア帝国となす。

 帝都はポルペウスの麓、ログヌス。遷都する。」

 この日から都を移す為、武力に脅された遷都が始まった。


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