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13.辺境伯家の騎士


 オブシディアン辺境伯家の騎士が近くまで来ていた。村人たちはありがたがっているし、実際に村の防衛のためには良いことだ。けれど、ハロルドは領主からの「要らないことをせずに家の中に籠っていろ」という手紙に「事情の説明くらいしろよ」と少しだけイラッとした。これがたとえば、自分が狙われているからだとか書かれていれば、「仕方ないな」で終わる話なのに、短く簡潔にそれしか書いていない。



(領民に学ばせる施策を取る人だから、まぁ悪意はないんだろうけど)



 どこぞの公爵領やら、ブライトの生家の領地やらよりは随分と良い政治をしていることを感じているので、ハロルドはそれらの感情を呑み込んだ。

 たまに出る魔物も軽々と倒しているあたり、辺境を預かる身として真摯に取り組んでいるのだろうと感じる。避難のためにあれこれと動いてくれてもいる。ハロルドとしては祖父母が安全であるに越したことはない。



「ただ、家にいるだけなのもなぁ」



 一応軽い運動はしているが、勘が鈍る気がする。溜息を吐きながらも、ハロルドはその指示に従って家の中で大人しくしていた。


 一方でアーロンはある程度の自由が許されているので、香水の撒かれたところを焼いている。それが臭うので日常生活に支障が出るし、彼の家には幼い妹もいる。近場だけでも安全を確保しておきたかった。



「ハル兄ん家、なんかすっごい見張られてるけど大丈夫なの?」


「ハルは何かと狙われがちだからなー。犯人が近寄ってくると思われてんじゃねぇの?」


「ハル兄、初対面で話すことを躊躇するレベルの美人だもんな」



 ハロルドは外に出たがっているだろうな、と苦笑しながら弟と話す。アーロンは弟のハロルドに対する感想を聞きながら「やっぱり男女問わずあいつのことは美人だと思うんだな」なんて思った。

 臭うところを徹底的に焼いて回れば、1日でかなり魔物の現れる量が変わった。急に過敏になった気がする嗅覚を不思議には思うアーロンだったが、そのおかげで村が平和であるならばそれはそれでいいかと見回りをする。


 黒い鎧の騎士たちは親切であるが、アーロンが歩き回っていることに少しだけ注意もしてくる。仕方のないことではあるが、鑑定ができる魔眼を持つハロルドが自宅に押し込められていて、彼ら自身もドラゴンの襲撃に備えている中、香水の件が動いている様子は見えなかった。犬を連れた冒険者や騎士がたまに地面を焼いていることもあるけれど、彼らは実際に臭いを感じたりその後の状態が詳しくわかるわけではないからかもしれないが、中途半端な状態で終わっていることもあった。それはそれでアーロンの嗅覚には辛かったのだ。生活の範囲内だけでも、消しておくしかないと判断した。


 ここにいる騎士たちは半分ほどがハロルドが王都へ戻れば、この事態は収まるのではないかと考えていた。狙われている可能性が高いのは彼だ。いっそ王都で囲われていれば安全なのではと考える人間もいる。

 ハロルドはあまり楽観的には考えてはおらず、「じいちゃんやばあちゃんたちが人質にされないと良いけど」なんて言いながら身体回復薬や魔力回復薬などを暇つぶしに作っていた。


 そんな事態が動き始めるのに、そう時間はかからなかった。

 突然、冒険者や騎士団を黒煙が襲った。ドラゴンのブレスだと考えられるそれに対抗できる人間は少なかった。辛うじて村が燃えなかったのは冒険者・騎士団・村人の全てがそれなりの準備をしていたからだっただろう。

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