10.村に現れた魔物
悲鳴が聞こえた。
そこに駆けつけると、ムーンベアーがいた。それを氷柱で刺すとそれと同時に頭部に矢が刺さっていた。
「ばあさん、大丈夫か!?」
「ポピーさん、ケガはない?」
二人同時に手を出す姿を見て、腰を抜かしていたお婆さんが「ほほ」と笑った。その手を掴んで、立ち上がる。
「アーロン、ハロルド。ありがとうね」
「おう。……でも、こんなとこまでムーンベアーみたいなのが降りてくるなんて珍しいな」
「秋の木の実とか少なかったのかな」
倒した魔物を見ながらそんなことを言う二人に、ポピーは「いやぁ、今年はいつもより豊作だったくらいじゃぞ」と返した。ますますおかしいと顔をしかめるアーロンと彼より先に“ある物”の存在を思い出したハロルドが「ギルドに行こう」と言った。
「もしかして」
「ああ、事情を知ってるかもしれない」
一度被害に遭ったことがあるからだろうか。アーロンもその存在を思い出していた。
──魔物寄せの香水。
ギルド内の掲示板には「周囲に魔物を集めて一気に倒すことで、荒稼ぎをしようとした者たちを除名処分とした」と掲載されていた。それが村の近くでばら撒かれている可能性を考えた。タチの悪いことに、人間の嗅覚ではそれはわからない。
「……ハル」
「何?」
「なんか、スゲェ悪臭しねぇ?」
ギルドへと急いでいると、急に立ち止まったアーロンが眉を顰めている。よほど臭うのか「吐きそう」とガチな声で呟いているが、ハロルドは何も感じない。
「……どのあたりかわかるか?」
ある可能性を考えたハロルドがそう問えば、アーロンがある方向を指差した。躊躇いなくそこに近付くと、スカークロウが飛び込んでくる。それを「邪魔」と叩き落として雪を溶かす。すると、その下から割れた瓶を見つけた。鑑定すれば、想像通りの結果が出る。どうしようか、と考えていると右下にエクスクラメーションマークのようなものが出ていた。
(何だこれ)
錬金術師のジョブスキルでは出てきた画面に触れることができたけれど、魔眼で鑑定したものに関しては見えるだけのようだ。少しだけ考えて、そのマークをじっと注視をすると注釈が現れた。
!加熱すれば臭いは消える。
それを見て周囲を無言で焼いた。
振り返って、「どう?」と聞くと不思議そうな顔で「消えた」と首を傾げた。
(もしかして、魔眼も成長するのか?)
ジョブスキルも機能が成長したのだから、それもあり得ると自分を納得させる。
実際にハロルドの予想は正しかった。最近あれこれ使う機会が多くなっていたため、少しずつ成長していた。
それを「危険に陥るよりはあった方がいいもの」だと受け入れて、彼らは冒険者ギルドへと急いだ。
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