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6.不思議な卵


 冒険者ギルドに素材を預けに行く。アシェルは久しぶりの二人に「やっほー、帰ったんだね〜」とひらひらと手を振った。その足元に呻いている男が一人いるのは無視した。



「ごめんねぇ、見苦しいもの見せて。コイツ、どこで手に入れたか知らないけど禁制品持っててしょっ引いたとこ」



 魔物を誘き寄せる香を持っていたことから、即逮捕されたらしい。隣で黒い犬がガルルと唸っている。



「国から通達が来ててさぁ。こんな辺鄙なところで使うバカいるのかって思ってたけど、いたんだよなぁ」



 そのアイテム説明を聞きながら、「あいつら、普通に法律違反してたんだな」と二人は目を見合わせた。アシェルはプリプリと怒りながら、「こんなところで使ったら、良くて村壊滅で悪くて大規模スタンピードだよ」と男の大切なところを思い切り踏み抜いた。なんか妙な水音と悲鳴が聞こえた気がするが何もみなかったことにする。アーロンは弟の耳を防いで後ろを向かせていた。



「ちっ、汚れた。クソがよ」



 その上品で優しそうな顔からは想像できない態度でようやく、「いや、この人高ランク冒険者だったな」と思い直した。結構言葉遣いが荒くなる冒険者は多い。

 速やかに掃除にやってくる他の職員二人には「僕が後でやっとくよー?」と声をかけていたが、二人は「子どもたちに見せるもんじゃねぇんですよ!!」「ここ窓口!!加減してくれねぇですか、アシェルさん」と返して素早く状態を戻してくれた。



「アーロン。片付け終わったよ」


「おう。もういいぞ、汚ねぇのは片付いたらしいから」


「何があったのさ。なんかちょっと臭うんだけど」


「色々だよ、色々」



 ふふ、と笑うアシェルがパチンとウインクをしてみせた。それを胡乱げに見つめて、咳払いをする。「あ、手続きだったね。喜んでー」と彼は手早く手続きをしてくれた。仕事はめちゃくちゃ早かった。


 もうすでに捌いてあったので査定は早く済んだ。というか、「いつもハロルドくんにやってほしい〜」とか言われた。「無理です」と返した。


 そうやってようやく、薬草をとりに来るところまで辿り着いた。

 冒険者ギルドの裏手にある山の麓。そこには少しだけ周囲より大きな木があった。特に由来があるなどという話は聞いたことがないけれど、その周囲には薬草がよく育つ。その中のいくつかを根っこから掘り起こして、丁寧に包み、鞄へと入れる。

 ハロルドがその作業をしている間、アーロンとグレンが周囲を見ていた。たまに護衛の方々がひょっこり顔を出して手を振ってくる。それに手を振り返していたアーロンだったけれど、ふと何かの気配を感じて後ろを向いた。気配を少しずつ辿っていくと、木の少し上あたりのようだ。



(ハルが前にバチクソキレたから、まぁグレンも死ぬ気で守ってくれるだろうし見に行ってみるか)



 弟に声をかけて、木の上に登る。前ならともかくとして、今の彼には魔法という便利なものがある。足に強化魔法をかけて飛び上がれば、そこそこの距離が稼げた。

 そして、何かに呼ばれるようにそれを見つける。


 ──それは、真っ白な卵だった。

 妙な存在感を放っている。誘われるようにそれに触れると、一瞬だけ何か膜のようなものを感じたけれど、すぐにアーロンを受け入れるようにその手に収まった。



(鳥の卵か?食えるのかな)



 そんなことを考えたせいだろう。ハロルドの上にキラキラと白い光が降ってきた。彼だけに女神からの緊急通信(神託)が降りて、脳内にけたたましく響いた。



「あの子が希少な卵を食べようとしてるの!!やめさせて、というか育てさせて!?」



 小さい声で「いきなりは、響く、頭……痛い」と呻く。一応我慢をして振り払うように頭を振った。



「アーロン、それ食用じゃないらしい。育てて」


「はぁ……?」



 後ろに目でもついてるのか、と思いながら卵を見つめた。ハロルドが言うなら仕方がないなとそれを布に包んで鞄に入れた。

いつも読んで頂き、ありがとうございます!!


念話みたいな形でのお話なのに、ボリューム間違えたらアカン……

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