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34.お姫様との再会




 夜にこっそりと王城を訪れる。

 理由は目立たずアンネリースたちに会うためだ。豊穣祭の夜は夜会が開かれている。多くはそちらに目が行くため、動きが察知されにくい。



「お久しぶりにございます。愛し子様」



 優雅にカーテシーをするエヴァンジェリン。その斜め後ろで、アンネリースもまた同じようにしていた。あの時出会った女の子との差にハロルドは困ったような顔をした。



「お久しぶりです。エヴァンジェリン様、アンネリース様」



 女の子が大きくなるのは早いなぁ、なんて思いながら「これはいつも花の種や良い苗を融通してくださるアンネリース様へのお礼です」と髪飾りを侍女に手渡した。

 それにピクリと反応を示すアンネリースだったけれど、母親の視線に何かを感じたのかグッと堪えた。



「確認させていただいても?」


「どうぞ」



 露店で買ったものではあるけれど、鑑定したら普通に宝石だったし、綺麗だったので包んでもらった一品だ。呪いはないし、むしろそんなに強くはないけれど守護のおまじないもかかっている。

 包みを開いた侍女が片眼鏡の老執事にそれを見せると、しばらくして彼が静かに頷きアンネリースへと渡った。もしかしたら彼もまた鑑定系の能力を持っているのかもしれない、などと思いながらアンネリースがそれを受け取るのを眺めていると、その髪飾りを見たアンネリースの瞳が輝いた。

 美しく輝くエメラルドを中心としたそれは彼女の手元でキラキラと輝いている。深緑の石が嵌め込まれた髪飾りは愛らしい。



「ハロルド様、ありがとうございますわっ!!」



 猫はあまり長く被れなかったようだ。

 やったー、とばかりに持ち上げたり色んな角度から髪飾りを眺め、侍女に「急いでつけているところを見せたいですわ!!」と言ってから「無茶を仰らないで我慢してくださいませ」と返されて頬を膨らませていた。



「わがままを言うなんてコドモだな」



 そんなことを呑気に言っているブランだけれど、隣にいるハロルドはそれを見て微妙な顔をしていた。朝、祭りに参加してどうしても買い食いをして回るのだと騒いでいた精霊様には流石に彼女も何も言われたくはないだろう。



「それで、本題なのですが」



 手紙で知らせてはいたけれど、改めてことの経緯を説明する。

 説明しているうちにエヴァンジェリンが呆れたような顔になっていったのは仕方がないだろう。誰だって精霊が棲むような樹を伐るバカがいるとは思わない。場所にも思い当たるところがあるようだ。



「これがその樹なんですけど」


「まぁ、とっても強い魔力を感じますわ」


「ハロルドが育ててたら前よりすごいスピードで育つようになってしまった」



 元々が特別な樹だ。精霊がずっと近くにいることや、ハロルドがせっせと世話をしている温室に置いてあったこともあってもう太腿くらいの高さにまでは育っている。意地でも温室で大きな樹にまで育てたくなかったハロルドは割と初期段階で鉢植えに植え替えた。



「王都に植えると利権を奪おうとする愚か者がたくさんいて面倒だってルートヴィヒ殿下が言っていたので、妖精たちに運んでもらえるバリスサイトに植えたいんですけど」


「そうでしたのね。では、持ち帰って検討を……」


「エルフの皆様に聞けば良いのですわっ!ハロルド様、女神殿もおっきいのを建設中ですのよ!!森の復興もそこそこ進んでおりますし」



 バリスサイトであれば、神罰が起きたあとすぐに神官たちが消えたので良いだろうと王太子の方が勧めて来ていたので、ありがたい話だと「今すぐ行ってもいいですか」とそれに乗った。ぴょこぴょこと跳ねるブランが「我もすぐがいい!!すぐおっきくする!!」と食いついたので、大人たちは顔面蒼白である。今すぐとか聞いていない。物事には準備が必要である。

 妖精たちが「さっさと道を開いちゃうわよ」なんて言い出すから大変。「お出迎えの準備とかあっちにはありませんのよ!?」という焦りでいっぱいだ。ハロルドにだけ関して言えば「野営すりゃあいいしね」くらいの気持ちである。妖精トリオが頑張ってくれるだろうということがわかっているので、基本的に彼の身は守られている。


 結局のところ、最近ハロルドがキレるようなことがたくさんあって、その身が無事なのも妖精のおかげみたいなケースが続いているので多少の要求は飲むしかないのである。割と巻き込まれた立場のエヴァンジェリンは胃の辺りを摩った。

いつも読んで頂き、ありがとうございます!!

感想もとても嬉しいです!!ありがとうございます!!ただ、無理だけはなさらないでくださいね(汗)


2章終わったら設定資料一部投稿予定です。

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