表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/495

33.豊穣祭の始まり

本日(?)2話目




 神様のお気に入りこと加護持ちは、豊穣祭で着飾って神殿でイベントを催すことが多いらしいのだが、それはフォルツァートのところで当代の勇者と聖女がやっていた。特に聖女の方は第二王子を巻き込んでいるためかそれなりに盛大だ。

 ハロルドはフォルテの神殿に、夜に月明かりを浴びると淡く光を放つ品種のバラをそこそこの規模で供えるだけに留めた。目立つのは好きでない、ということもあるが、ハロルドは「あんなのと一緒にされるとか絶対嫌」みたいな考えの方が強かったりする。そのバラは非常に珍しく、豊穣祭前にたまたま神殿を訪れた貴族の一人から伝わって夜には一大デートスポットへと変貌した。原産である砂漠の国から来ていた使者は「我が国でもこれを咲かせるのは難しい」と感心していた。そして育てた人間を聞き出そうとするも、「フォルテ様の信徒でございます」としか答えを得られなかった。



「あのバラ、珍しいやつだったんだな」


「知らなかったのかよ」


「ああ。アンネリース殿下から送られたやつが綺麗に咲いたし、フォルテ様がなんか気にしてたから置いてきたんだ」



 夢に現れて「ハルの友達も強化しといたわ」という報告を受けた後、「ところでハルの家にある、あの一角に植えてあるバラなんだけどぉ……」とチラチラ見てきたので「そのうち供えますね」と返しておいた。それを叶えてあげただけである。ハロルドにしてみれば、バラ程度で友人の身が安全であるのならばそれに越したことはない。

 ブライトも最近夢で女神が出てきたらしい。精神魔法耐性がめちゃくちゃ上がるピアスを付けられていた。おそらく、ルートヴィヒも何らかの強化を受けているが、そもそも彼も実は後天的な加護持ちだ。フォルテが「向こうが要らないなら私がもーらお!」みたいなテンションでウキウキで引き入れている。例の儀式の後に授けられているせいで親すらまだ気がついていない。



「庭がすっきりしたよな。一応少し残してんのってローズが気に入ってたからか?」


「そうだよ」


「アタシ、愛されてる!」



 きゃっきゃとはしゃぐ様子を見せるローズではあるが、バラを神殿に持って行く時に相当駄々をこねた。「アタシの!!それ、アタシのなの!!」と手足をジタバタさせていた。ハロルドは容赦なく「いや、それ俺のだから」とぶったぎったけれど、それはそれとして可哀想なのでちょっとだけ残したという経緯がある。


 人が多く集まると誘拐の危険が増えるというなんとも世知辛い理由で、祭りの期間中、あまり出歩かないことを選択したハロルドは、約束の日時まで家にいることにした。祭りの期間は学園も休みなので、自学習くらいしかやることがない。普段なら「冒険者活動でもするか」なんて言うところだけれど、ギルドも人手が減っているので万一の時の救助活動などを考えても家にいる方が安全である。



「う〜……祭りとは外でみんなで楽しむものではないのか?」


「普通はそうかもしんねぇけど、ハルは顔面が整い過ぎて捕まって売られそうになっから無理」


「なんと不憫な……!あ、この苦めのカラメルソース美味!!」



 外に出たいとうるさいのでハロルドはブランにかぼちゃプリンを差し出していた。作った理由は「ハロウィンといえばかぼちゃだよな」という前世の記憶によるものだ。口に出していないし、彼の友人には転生者もいないので「この世界にハロウィンはないぞ」と突っ込む人間もいない。

 ハロルドが丹精込めて作ったかぼちゃを利用しているからかネモフィラは一心不乱に口の中にプリンを入れている。



「保管庫にもう一個あるやつ……」


「あれはリリィのだよ」



 食べ切ったため、ネモフィラがおかわりを要求してきたが、流石にそれを渡せば忙しく走り回ってくれているリリィは怒るだろう。彼女もそれを知っているのでしょんぼりと肩を落とした。



「冬に咲く花もいい感じで育っているし、温室の薬草は納品が終わり。うん、あといくつか種が余ってるからこれも植えておくか」



 時間があるからと農作物の世話をするハロルド。もしかしたら、ここ最近では一番ご機嫌かもしれない。

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

微妙に間に合わんかった!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ