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29.わんぱく元気なお姫様

もう一人の清楚詐欺




 外見だけはやっぱり清楚、見た目詐欺の第二王女アンネリースは手紙をもらってウッキウキだった。母親には「きちんと淑女らしく、淑女らしくするのですよ?あなたは姫なのですからね?聞いていますか、アンネリース」と言われているけれど、相手はそんなこと気にしない優しいお兄ちゃんなのだ。本人はそこまで気にしていない。

 アンネリースは見た目だけは側妃エヴァンジェリンに似て儚げで美しかった。少し小柄ではあるが健康そのもので、明るい性格をしている。ただ、外で遊ぶのが大好きだったり、態度がお姫様らしくないのでお見合いのようにお茶会を開いても婚約のこの字も出なかった。付いていける令息がいなかった。

 なお、正妃の娘に第三王女がいるけれど、彼女は若干わがままであり、これはこれで婚約の話は出ていない。


 アンネリースは自分と接しても「元気でいいね」と言ってくれるハロルドが割とお気に入りだった。実験のように育てている植物などについて手紙を出しても真摯に返してくれるし、時折お手製と見られる肥料も送ってくれる。大人しく淑女としてのお勉強だけして、男の半歩後ろを歩き、自分を立てろ。そういったことは一切匂わせない。さすが我が兄の友人と感心する。


 そんなおかげか今年の穀物はすくすくと育ち、全盛期とまではいかないけれど、収穫量は大幅にアップした。お礼にちまちまと希少な種やら苗を送っているけれど、それに関してもきちんとお礼のお手紙をくれる。結婚するならこんな人がいいわ、とちょっぴり夢見てしまう。

 そんな相手から「お会いしたい」だなんて手紙が来たものだからテンションぶち上げ状態である。ただでさえおそらくハロルドが何も知らないことを良いことにこの季節に花の種を贈っている。意味合いとしては「いつかこの思いが花を咲かせ、実を結びますように」という昔からのおまじないだ。国を救った英雄とも言われる緑の手の少女が、育てた草花をきっかけに貴族の青年に見初められたことも、未だにその意味を損なっていない理由だろうか。



「豊穣祭までには、豊穣祭までにはせめて淑女として恥ずかしくない作法を仕込まなくては……!」



 ただでさえ、不測の事態が起きて王家を信じられなくなっているから本当に頼むと国王直々の嘆願のような手紙が届いていた。いくら優しかったハロルドとはいえ、どこぞのバカな女に絡まれて嫌な思いをしたばかりだ。大人しく距離を測って本当の淑女らしくしておかなければとエヴァンジェリンは思った。


 そして、肝心のハロルドは「豊穣祭に合わせてアンネリース殿下が王都に来るらしいけど、こっちの祭りってどんな感じ?」とルートヴィヒに聞いていた。なお、ルートヴィヒは友人が妹と会う約束をしていることにちょっと腹がたった。「ズルいぞ!」という気持ちでいっぱいだ。彼は本当なら友人と一緒に遊ぶ気しかなかった。けれど、第二王子一派が教会と結びついてやらかしまくっていたせいでちょっぴり忙しくなってしまった。



「そうだな。まぁ、婚約者とかに贈り物を渡して適当に窓から顔を出して手を振る日だな」


「僕、そういうちょっと外れたこと言う時のルイ、王族だなーって感じる」



 呑気な声でそう言って、ブライトはテーブルの上のクッキーを摘んだ。好みの味だったのか、ニコニコとしている。



「露店が出たりとか、珍しい商品がいつもの店に並ぶようになったりするらしいよ。成人貴族になると夜会があるけど、それは関係ないかな。夜になると平民でも恋人や気になる人と中央の噴水のあたりで集まった楽団の音楽に合わせて踊ったりするらしいよ。今年一年の収穫と来年の豊作を祈るお祭りでね、結構賑わうんだって。あとはまぁ……お世話になってる人とかに贈り物をすることも多いかな」



 ブライトが「僕もあんまり縁がなかったから詳しくはないんだけどねぇ」と言いながらも説明してくれた。お世話になっている人に贈り物をするというのであれば家族に何か買って送ろうかな、などと考えるハロルドとアーロンは割と良い子なのかもしれない。



(なんか珍しい種とかももらっちゃったし、アンネリース殿下にも何か贈るか)



 そこらへんで走り回っているルートヴィヒの妹を思い出して、何ならなくさないかなーとか考えているあたりにハロルドがアンネリースをどれだけ「元気な子ども」扱いしているのか窺い知れるというものだろう。

 綺麗な顔面を持っているとは言っても彼の中身は普通のおっさんなので、ある意味仕方がないし、アンネリース本人の行動が普通に大人っぽくはないのでそちらも仕方がないだろう。

いつも読んで頂き、ありがとうございます!


アンネは現状猫ちゃんが被れないどころか秒で逃げ出す系のポン。

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