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23.空中レスキュー




 役に立たないなら護衛なんぞ知るか、とばかりに箒でかっ飛ばして指定された森を上空から見下ろして目的の場所を探す。割と高い位置にある崖で彼らを見つけたハロルドは目的の人物を見つけて下降していた。

 彼らがアーロンを放り投げたのはその瞬間である。そして、正気を無くしたようなリッパースクワロルが飛びかかっていく。

 リッパースクワロルの群れがエレノアたちに近づくのを感じてはいたけれど、ハロルドは彼女たちを気にかける余裕がなかった。落ちていく親友を追いかけてスピードを上げる。突如突き上げてくる大量の矢を避けて、意識が今にも落ちそうなアーロンに必死に手を伸ばした。


 間に合ったのは、奇跡と言えるかもしれない。地面手前でなんとか身体を掴んだ。勢いを殺せなかったために一緒に地面に転がる。必死に起き上がって抱き止めたアーロンを名を呼びながら揺する。うっすらと目を開けた彼の口に、ハロルドは小瓶を突っ込んだ。


「ンゴッッッ……!?ゲホ、ゴホッ!?」



 飲み込みはしたけれどまだむせるアーロンの手を見て無表情のまま、また別の小瓶の中身をその手のひらにぶちまけた。



「イッッッッッタァァァァァアアア!!?」



 手を震わせながら呻くアーロンの傷が他にもないか確認して、それからあまりの痛みと突拍子もない行動に文句を言おうとしたアーロンの肩に頭を乗せた。



「ぶじで、よかった」



 震えるハロルドの声に、言葉を飲み込んで、代わりに大きな溜息を吐いた。



「お前のおかげで無事。ありがとう」



 ぽんぽんと背を叩くと、 ようやく少し気が抜けた……かと思えば、思いの外鋭い目つきで空を見上げる。そのまま手のひらを上空に向けると、ネモフィラが「ハルの望む通りに」といつもよりもどこか熱の籠った声で青い光を振り撒きながらその周囲をくるりと一周した。



「落ちろ!!」



 氷の槍が上空から雨のように降り注ぐ。いつもとは若干魔力の気配が違う。感動の再会から一気に血塗れフェスティバルの会場へと変わった。



「なんでこんなに物騒クソネズミが出てくるんだよ」



 心底忌々しそうに毒づくハロルドを見ながら、急に今「生きている」という感覚が出てきて、アーロンの目から涙が溢れた。慌てたようなハロルドの気遣う言葉になんだか少し笑ってしまう。



「あのバカ女に妙な香水かけられたからそのせいかも。なんか、お前と結ばれるために必要とか言ってたけどなんだろうな。つーか、匂いしねぇんだけど」



 匂いはせずとも香水と聞いて、ハロルドはアーロンに「水かけるよ」と言う。頷くとそれなりの量の水を被った。すぐに火を用意してそのそばにアーロンを追いやると、遠くから小さく声が聞こえた気がした。



「人間には無臭でも、魔物に対して有効なら上で襲われてる可能性ってある?」


「あるかもね。一応、救護用の煙玉割っておくよ」



 友人を崖から落とした人間たちなんてどうでも良いけれど、このまま戻るのも危ないかという判断である。






 それ等に彼女たちは囲まれていた。

 手に持っているのは鋸、斧、剣、鎌など様々ではあるが共通して猟奇的だ。小さく愛らしい顔をしているけれど、すでに一緒に来ていた護衛の一人が足を切り落とされている。呻く男に、それ等は群がっていく。


 その惨たらしい光景に、少女は悲鳴をあげた。

 ──あげてしまった。


 それ等の視線は一気に少女を捉える。今解体を始めた男よりも、幼くて柔そうな少女の方が美味そうだった。ガリガリと得物を引き摺る音がした。

 斧を持った宝石を思わせる硬質な生き物が一声あげる。それは自分の獲物なのだと主張する上位の存在に彼らはピタリと動きを止めた。

 もう一声あげるとそのうちの約半分が崖下へと飛び立っていった。


 ガチャリ、ガチャリと得物を鳴らす音がする。

 それは彼女たちにとっては絶望そのものに他ならなかった。

いつも読んで頂き、ありがとうございます!!

感想もとても嬉しいです、ありがとうございます!!


以下ハロルドの行動まとめ

鑑定→魔力不足で意識飛びそうなのかよ!?→魔力回復薬ゴッ!→手ぇやっば!?→身体回復薬ザバー!!

って感じ

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