18.下品なラブレター
「きっっっっっしょ」
その日最後の授業が移動教室だった。
そこから帰ってきたハロルドの机の中に、手紙が入っていた。わざわざ魔眼で安全性を確かめてから、迷いなくそれを開き目を通した。その第一声がこれである。
あからさまに「愛人になれ」とハロルドに要求するラブレターだった。それはそれは熱烈な口説き文句が散りばめられているが、ハロルドは見知らぬおっさんからの手紙だったので「キッツ」としかならなかった。なお、年齢性別名前がわかるのは本文中でおっさん自身が書き記していたからである。
ハロルドはそれをいつも通りに上に送りつけた。これだけ酷い手紙ならばすぐになんとかしてくれそうだ。
「早速なんかもらってるけど、それ何?」
ブライトが覗き込んできたので、見られないようにと折りたたむ。単純に友人に読ませるには気分が悪すぎる内容だ。若干シモの話も入っている。正直なところ、ハロルドだって読みたくはなかった。
「死ぬほど嬉しくないラブレター」
「男からとか?僕もたまにもらうー!」
アーロンは友人二人の話を聞きながらドン引きしている。顔が良いのが全く羨ましくなくなっていた。
「とりあえず、エドワードさん宛に送って、多分そこからすぐ王太子殿下にいくから思う存分やってもらおう」
「うちの国の上層部って結構聖職者と仲悪いもんね」
「人によるだろ」
実際、ウィリアムは信用を得ているし、そのほかにも数名信用されている人間はいる。ただ単にその他の連中のやらかしがすぎるだけだ。
(そういえば、この間の孤児院併設の教会とは名ばかりの、倒壊間近のボロ家ってそろそろ引っ越しが済んだ頃かな)
宗教の話から思い出す。
結局、あまりにもボロボロだったため修理では間に合わず建て直しになったそこはハロルドが「加護付きの予算でなんとかなりませんかね」と直接上に聞いた結果、以前よりはマシな生活をしているようだ。あの教会の予算をパクっていた連中には痛いかもしれないが、予算も取り戻して子供達も元気にしているようだ。
「それはともかく、その手紙は手っ取り早く届けるために私が預かっても構わないか?」
後ろからひょっこりと現れたのはどこか空々しい顔のルートヴィヒだった。友人過激派の王子様は他の人間を通さず父と兄をけしかけるつもり満々だった。
元々送る先はそこだったので大人しく手紙を預けると、にっこりと微笑んだ。
「ついでに一部の神官も探っておこうかな」
どこか楽しそうなルートヴィヒを見ながらアーロンは「敵に回しちゃいけねぇやつっているんだな」と思った。
豊穣祭も近づいてきているのに、厄介な人間の相手ばかりしていたくもないので黙っている。アーロンだって自分と友人たちが平穏無事に楽しめている方がいい。
「そういや、例のエセ清楚もそろそろ出てきそうなんだよな」
「なんでこんなに悪いことって続くのかな」
そんなハロルドの後ろで姿を隠した妖精たちは「忍び込んできたら、お尻をボン!」「水をザー」「土にズドン!」と手順の確認を始めていた。ただでさえ簡単に手を出せる存在でなかったハロルド。それに妖精がついていることを知っている人間がそもそも少ないのに、さらにその妖精が進化していることなんて誰も知らない。拉致誘拐、夜這い=死である。
いつも読んで頂き、ありがとうございます!
感想ありがとうございます!!
一応建物の規模として神殿>教会としてこの作品では書いてるつもりです。表記揺れあったらすみません!!