15.木材の使い道
本日更新2回目
不思議なことが起こるものだと思う。とりあえず、手に入れたものは使おう、とハロルドは以前から考えていた機動力の確保に使うことにした。
加工方法は錬金術師というジョブスキルが教えてくれる。肥料や回復薬をノリノリで生産していたからか、成長して「薬剤生成」以外にも「魔道具作成」「魔道具強化」、そしていつのまにか「料理」が項目に追加されている。料理の項目を不思議に思いながら選択すると、前世のレシピなども出てきてそっ閉じした。
「プリンが作れる」
目が据わっていた。
ハロルドは甘いものが好きだった。
気を取り直して、魔道具作成の欄を選択する。ハロルドがイメージしているのは黒猫を連れた魔女の子が持っている箒や、薬で小さくされたメガネをかけた少年探偵のスケボーなどである。手軽でスピードが出せることが好ましい。
最終的には馬などの騎乗できる動物を飼うのもありだとは思っているけれど、生き物を飼うことには責任が伴う事を考えれば積極的にはなれなかった。自分のせいでいたずらに危害を加えられることも否定できない、と溜め息を吐いた。
(流石にスケボーは……無理か。魔法の絨毯は材料の入手が困難だな。作るだけなら箒が一番無難っぽい)
問題は安全性だ。けれどその辺りは作ってから考えようと彼は器具を準備し、魔道具作成をポチッとした。
いつも通り手動だろうと思っていたハロルドの後ろから魔力でできた機械の腕のようなものがニョッキリ生えてきた。「何これ」と驚くものの、それらは器具を持ち上げている。木を箒の持ち手へと手早く加工していくそれに何も考えないことにした。便利なのは良いことだ。
綺麗に小枝が束ねられていく。この小枝は元々今の家に植えられていた木の手入れをした時のものだ。それでいいのか、と思わなくもないけれど深く考えないまま出来上がっていく様を見続ける。
そう時間も掛からぬうちに完成した。
「まだ余ってるな」
アーロンのものも作るか考えて、やがて首を横に振った。弓使いとは相性が良くないのではないか、ということに気がついた。
(やっぱり、そのうちできれば馬……それも魔馬か妖精馬あたりが必要か……?でもそれが俺たちに懐くとも限らないし)
獲物を運ぶのにも役に立つし、とは思うけれどそういった自らの身を守れる種はとても気軽に手に入れられるものではない。それこそ尋常じゃない値段がついている。しかも、騎乗する相手を獣自身が選ぶこともあり、買ったけれど乗れないことだってありうる。ハロルドも現実的ではないと判断せざるを得なかった。
異空間収納にしまってから、箒を持って庭に出る。青々と茂る薬草やハーブ、花の蕾が目に入った。
外から見えないようになっているので、できるだけ踏み潰さなくていい場所を選んで箒に跨る。箒で空を飛ぶ事を強くイメージして、指先から少しずつ魔力を流し込んでいくとやがて少しだけ浮かび上がった。感覚を確かめながら魔力を足していく。規定値に達したのか箒の柄に一瞬だけ紋様が浮かび上がると、ハロルドが思ったような魔法がかかっているギリギリの高さまで浮かび上がった。滑るように空中を走る。
「楽しいかも」
ただ、安定はまだしないのかグラつくと一気に姿勢が崩れる。要練習である。
幸いにも、やればやるだけ上達するのであれば努力ができる質でもあった。
屋内に入ると、置いていた水晶花に蕾ができているのを見つけた。もう少しで妖精たちともお別れか、と思っているハロルドではあるが妖精たちにその気はない。彼女たちはハロルドにくっついている気満々である。
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