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12.最悪な気分

※嘔吐表現有り




 ルートヴィヒが顔しか出ていないブライトに短剣を鞘ごとゴンッと頭にぶつければ白い光が散った。「思いっきりいったな……」とハロルドが思わず呟いてしまうレベルでぶん殴っていた。



「終わったぞ」


「やり方ァ!?」



 アーロンが思わず叫んでしまったのは仕方のない話だろう。けれど、少しだけ呻き声を発して目を開いたブライトを鑑定すれば魅了の文字は消えていた。ホッとするハロルドをよそに、ブライトの顔は青くなってきている。



「リリィ、拘束解いて」


「はぁい」



 媚びっ媚びの声で返事をしたリリィをよしよしと撫でながら、ブライトに「無事?」と聞くと、口を手で押さえていた。



「ぎも゙ぢわ゙る゙い゙」



 そんな彼を慌ててトイレに連れて行くと思い切り吐いていた。なかなか治まらないそれに四人は心配するような顔を見せたけれど、帰ってきたブライトは「ありがとうございます」と深々と頭を下げた。



「ごめん、家にあんなもん入れちゃって……僕もなんでか分かんないんだけど、視線が合わさった瞬間からこう、ぐらっとしてそこからなんかやられちゃったみたい」



 思い切り吐いた理由は操られている最中にエレノアにキスされて気分が最悪だったせいらしい。「とんだクソ痴女だよ!!」と吐き捨てたブライトの背をエドワードが不憫そうな顔で撫でていた。



「自分は高貴な伯爵家のとか言ってたけど、中身は貴族令嬢だなんて信じられない節操なしだよ!!」



 よほど気分が悪いのか、ルートヴィヒの前だというのに扱き下ろしている。レディッシュピンクの瞳が怒りに燃えていた。



「何より嫌がってるハロルドくんにあれを引き合わせた僕を許せない!!最悪!!」


「ブライトもだいぶ拗らせてんな……」


「ルートヴィヒ殿下よりマシだよ」



 小声でコソコソと話し合っているアーロンとエドワードをよそに、ハロルドとルートヴィヒはブライトを宥めていた。悔しそうな様子を見るにやはり不本意だったらしく、ハロルドの怒りのボルテージは微増した。

 情けない様子はたくさん見てきたが、ブライトが激昂している姿は初めて見たかもしれない。このまま放置すると殺しにでも行ってしまいそうなので、とりあえず「まぁまぁ」と言っておく。彼はすでに家族に雇われた暗殺者やらを返り討ちにしているだけに、殺す時は殺すだろう。そして、ハロルドは別にブライトにそんなことをさせたいわけではないのだ。



「とりあえず、貴族令嬢として生きていけないようにぶっ潰すやり方を宰相閣下にでも考えてもらおう?」



 穏やかな声で告げられた言葉にブライトは力一杯頷いた。そして、エドワードは「まぁ、その方が各方面にダメージ大きそうだな」と呟くと、ルートヴィヒに軽く挨拶をして部屋を出て行く。すぐにアンリたちに報告に向かったあたり、彼も思うところがあったのかもしれない。



「ところで、ブライト。おまえはハロルドたちと帰らずにしばらくここに泊まり込め」


「あ。やっぱり、魅了に引っ掛かったのはヤバいですよね……」


「そうだな」



 しょぼしょぼとした顔で落ち込むブライトに、「まぁ、ここで私の側近という形でこき使ってやるから励め」と追い討ちをかけていた。



「以前から私にも兄上たちのように側にいて共に励む仲間がいれば良いと思っていた。私の側にいるうちは魅了なぞかからないように状態異常を防ぐ魔道具を貸し出してやる」


「はぁい。僕も自分がハロルドくんたちに危害を加えるよりはルートヴィヒ殿下に管理してもらった方が安心ですしね」



 それでもちょっとは不満なのか唇を尖らせている。王城勤めなんて多くの人が夢見る就職先のはずだけれど、貴族生活から長く離されていたブライトには荷が重いと感じるものらしい。

ブライトが吐いているのは、

1.魅了酔

2.好きでもない異性に迫られるのは普通に気持ち悪い

3.やらかしたもののストレス

のせいなので本当は2.だけのせいではなかったりする。

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