22.便利な「もの」
ダンジョンと化した神殿の中に入ると、早速謎の機械のようなものが数体襲いかかってきた。
「明らかに技術と文化が合ってねぇよな!?」
ロナルドのツッコミに全員頷くしかない。
もっと昔に、かなりの技術を持った人間がいたのか、それともハロルドのような転生者やマリエのような転移者がこれを作り上げたのか。気になるところではあるが、今はそれよりも「どうやって壊すのか」という方に意識が割かれる。
「ゴーレムよりもかなり精巧だな」
「初っ端からコイツが出てくるってなると、先にはもっとめんどくせぇのがいる可能性があるのか」
話しながらもハロルドの強化魔法を受けたアーロンの矢が中央の球体へ向かって飛んでいく。
射抜いたそこからは軽い爆発音がして、煙を出している。
「中央がコアで確定みたいだ。全部ぶち抜くぞ」
「了解」
こういった事態には慣れているとでもいうように阿吽の呼吸で戦うハロルドとアーロンに、ロナルドは舌打ちした。
ロナルドだって、強力と言われた魔物を何体も屠ってきた。にもかかわらず、彼らの方が場慣れしているように感じられる。
気を逸らした瞬間、背後から機械の魔物がレーザービームのようなものを放ってきていた。避けられない、と思った瞬間、彼の目の前には土の壁が作られていた。
「気を抜いては死んでしまいますわよー?」
ヴィクトリアにそう言われて「わかってるっつーの」と言いながらそれを真っ二つにする。
自身で手に入れた魔剣の切れ味は知っているつもりだ。魔力を通すと光と風、炎の三つの力を纏い、思うままに魔物を切り伏せることができる。
焼き切るもよし、単純に切り裂くもよし。
そんな剣だった。
(くそ、刃こぼれしてやがる)
想定以上に機械が頑丈だったのだろう。
初めての事態にうんざりする。
ロナルドはシャルロットに目を向けた。
彼女の持つ聖剣は、機械相手にも刃こぼれ一つしない。むしろ、悪きものを焼き切るのは当然だとでも言わんばかりに輝いている。
(俺だって、聖剣が間に合っていれば)
ついに見つかったそれは、次は鍛治職人が見つからなかったせいでロナルドの手に入るのが遅れていた。
ハロルドの手で生まれ変わった聖剣があるというのだから、任せればいいと言ったが、フォルテ教より返ってきた答えは「できない」だった。
そもそも、シャルロットが持つ聖剣を作る際にかなり酷い怪我をしたそうだ。実際に、その手を見た時の恐怖は側にいた者にしか理解できぬだろう。実際、ロナルドもそれくらいで、とは考えた。
「苛烈なフォルツァート神の剣です。剣も気性を僅かでも継いでいるとすれば、今度は怪我では済まないでしょう」
その記述で諦めたのだ。
ハロルドは『役にたつ』。そんな予感がする。
それをここで使い潰すことこそが勿体無いと考えたのだ。
何体目かの機械を壊した後、足元に赤・緑・白が複雑に混じり合った光の魔法陣が現れる。
その光が収まった頃、新手が目の前に現れて、それに剣を振り下ろす。
「……ッ!?」
切れ味が戻っていた。よく見ると刃こぼれもない。
いや、戻っているどころか以前より良くなっている。
ロナルドは横目でハロルドの姿を捉える。
目が合うことすらなかったが、ロナルドの剣の状態に気がついたあたりにきちんと周囲を見ていることがわかる。
やはり、その力は有用だ。
ロナルドは謎の機械を両断しながら、そう考えていた。




