21.説明が足りぬ神
砂漠の中にひっそりと存在するその遺跡には、フォルツァートの伝説の痕跡が少し残る程度だ。
聖騎士やハロルドたちを連れてそこにやってきたロナルドは心底面倒そうな顔をしていた。
「帰りてぇ〜〜〜」
ここは、彼がそう言うくらいに、ややこしい……
——『ダンジョン』になっていた。
「聞いてねぇぞ、オッサン。俺はなんか神殿があるから解放して来いとしか言われてねぇ。何なんだフォルツァート。こういうとこだぞ?こういうとこがユースティアに正座させられるんだ」
ロナルドがかなりまともなことを言っている。
フォルツァートの適当さはそれほどなのか、とハロルドとアーロンは視線を交わした。彼らが関わる神々はダンジョンならばダンジョンであると教えてくれていた。場所や相手によっては対策もくれる神だった。
「俺、今だけ、ほんのちょっっっとだけ、コイツが可哀想になった」
「アーロンは優しいな。俺は小指の甘皮ほども可哀想には思わない」
にこやかにそう返すハロルドを見たアーロンは、ようやく相棒が想像しているよりも目の前の勇者のことが嫌いなんだなと納得した。
「いやでもダンジョンか……。俺もいい思い出はねぇんだよな。安全の確保も兼ねて、今からでも地図作成スキルが俺も欲しいわ」
「あれは酷かった」
「最悪だった」
幸運の女神トゥーナ奪還時を思い出した二人は遠い目をしていた。
二人からすると最悪のダンジョンの思い出である。巨大漆黒ミノタウロスとかいう悪夢とはもう出会いたくないものだ。
「まぁ、今だったら多分俺も役に立てるだろうけど」
成長するに連れて、魔力が大きくなり、また単純に力も増している。弓自体の技量も上がっているため、アーロンの判断は間違えてはいない。
「ですが、神殿がダンジョン化するのを見るのは初めてですね。我が国と近い場所ではやはりフォルツァート教を信仰する者が多いと聞きますが、この薬学都市イラージュでは医神アルスの信仰が広まっています。神の影響力は信仰の有無で決まるところも多いので、自然とフォルツァート神の信仰が弱くなったのでしょう」
「そして、影響力が弱くなって昔の神殿が埋まるほど放置された結果、ダンジョンに飲み込まれた。ということでしょうねー?」
シャルロットとヴィクトリアは周囲を確認しながらそんな分析をしている。
ロナルドは一緒にきた全員を見回して、改めて溜息を吐いた。
この場で異分子が自分の方である、ということはなんとなく理解ができる。
変に煽られたりしない分、気は楽だが、性格が合わないということも感じていた。
「帰りてぇ……」
そうボヤきつつ明後日の方向を見る。
そして、少し考えた後で、「でも、イベリアんとこいるよかは楽しいんだよな」なんて思った。




