20.勇者様の『苦手』
目の前に並んでいる二人の女性に、ロナルドはすごく、とても、かなり、嫌そうな顔をしていた。
「どうせ呼ぶなら、おまえの婚約者の女にしろよ!あれも手を出そうとは思えねぇイカレ女だが、ババアと筋肉ダルマに比べたら視界がマシだ!!」
「エリザは絶対に君に会わせたくないし、イカレ女なんて次に言ったら俺はここで降りる」
その場にいたほとんどの人間がエリザベータ・ルビーがちょっと(?)ぶっ飛んでいるのは知っているだけに複雑そうな顔をしている。
そして、ロナルドはヴィクトリアとシャルロットに扱き下ろされていた。
「本当に、教育のなっていない殿方ですわねー?」
「マラカイト公爵家もさぞや苦労しているでしょう」
「あら、あの家もそんなに態度の良い家ではなくってよー?」
「なるほど。同じ穴の……というやつですか」
美しい女性たちのそんなキツい言葉を食らっても、ロナルドはまるで興味がなさそうである。
気の強い美人はもう十分だった。イベリアだけでもうんざりするのに、最近ではロナルドを『運命の人』なんて呼ぶイオまでいるのだ。本当に嫌だった。
それに加えて年上の女問題ではかなり絞られている。主にハロルドの母とあった件について。これに関してはハロルドを懐柔したがっていたフォルツァート教からも時々小言を言われるくらいだ。
「どう考えても、この場にエリザベータ様が来るより、この二人の方がいいだろ。あの人が来たら、勇者なんて関係ないとばかりに殺しにかかる可能性があるぞ」
「ハルに迷惑かけてるコイツが悪いのよ」
「そうですね。むしろ来ていただいて片付けてもらうのが正解だったかもしれません」
アーロン、ローズ、ルクス。いずれも容赦がない。
「本当にいい加減ぶち殺すぞ、アーロン」
「ちなみに俺はアーロンの味方につくけど」
ハロルドの言葉に、ロナルドは本当に嫌そうな顔をした。
今の彼は、ハロルドが今回の件に必要不可欠であり、女神による加護を得ている幼馴染と戦っても碌なことにならないことを、フォルツァートから聞いて察していた。
(あいつをぶっ殺したら、フォルテとかいう女神がガチギレてドギツイ神罰を加えられた上に神界大戦争になりかねないんだっけな)
かつてならばそこまで大きな問題にはならず、一方的にフォルテが負ける展開もあり得たかもしれない。
しかし、ハロルドが普通に生きようとした結果、神にかなり好かれてしまい、彼の神々への配慮もあって力を増した。フォルツァートですら少しだけでも遠慮する程度にはなっている。遠慮してこれか、という話ではあるが。
(あのオッサン、妻たちが三柱揃って離反する可能性の方に震えてやがったけど)
そう。別にフォルツァートにとってはフォルテが怖いものではないのだ。というか、おそらくフォルテが少しばかりキレて殴りにきても、「兄妹喧嘩」としか考えないだろう。実際にどちらが兄とか姉とかは別として。
しかし、妻たちが離れていくのは嫌だった。彼は本当に妻が大好きなので。
「どうでもいいことは置いといて、どういう手段で目的を達成できるか……作戦会議にしよう」
「そうだな」
ロナルドのことは本当にどうでもいいハロルドとアーロンはいつも通りに集めてもらったデータを広げて話し合いを始める。
魔物の性質やその対処などをまとめ始める二人は、友人を連れてさっさと国に帰ることしか考えていなかった。




