13.イラージュでの宿泊
イラージュの店に後ろ髪を引かれながらも、宿に辿り着いた一行は部屋に入って一息吐いた。
部屋に入る時、ロナルドはアーロンに思い切り中指を立てていた。アーロンが何か言う前に部屋のドアを思い切り音を立てて閉めたロナルドを見て、二人はちょっと苛立った。お行儀が悪い。
「あいつ、嫌い」
「そうだね」
相手もおそらく同じことを言っているだろう。ハロルドはそう思った。
同じくらいの年齢の人間らしい喧嘩でもある。
荷物を置くアーロンは「あの野郎、さっさと帰れや」と言っている。そして言葉の割に荷物は丁寧に扱っていた。
「なんであんなにつまらねーって顔してるのに帰らないんだよアイツ!」
「争い事への嗅覚があるってことだろう」
「つーか、ハルはムカつかないのか?」
「いや……正直、アーロンが俺の分まで怒ってるから冷静になってるところはある」
そう。ハロルドも普通にロナルドのことが嫌いだ。ムカついてもいる。
が、目の前で睨み合う二人の様子を見て冷静になっていた。一対一ならば喧嘩の一つもしていたかもしれない。
「それにしても、本当に残念だな。やっぱりこの辺り、徹底的に探索したい」
きっと面白い薬草や本がたくさんあるだろう、と考えるとしばらくイラージュに滞在したいという気持ちが強くなる。アデニウムから話を聞いているため、余計に。
ハロルドの趣味を考えるとそうだろうな、とアーロンも苦笑する。わざわざ本を取り寄せて、ラムル語を勉強してまで読んでいるのだ。残念がるのは仕方のない話だろう。
「俺の場合、旅行とか留学って許してもらえるものなのかな?」
「ハロルドは無理じゃない? アーロンでも待ったがかかると思うけれど」
ハロルドの鞄の中からルーチェがひょっこり顔を出す。赤い小鳥の姿である。
しかし、「ルゥが外に出ると、迷惑かけちゃうかしら」と言って基本はハロルドかアーロンの鞄の中に引っ込んでいた。
「神にこれだけ好かれているのだから、そんなに大きなリスクは取らないと思うかしら」
「そうだよねぇ……」
ハロルドの心の底からの「残念」という言葉に、妖精たちは「ハルかわいそう〜」「よしよし、する?」などと言いながら彼の頭を撫で始めた。
その後ろで、スノウは「ご飯の時間になったら起こして」と言ってアーロンのベッドで転がっていた。
自由である。




