8.理解できぬ人
「なんか、あの自称勇者。いつもと様子が違って気持ち悪くねぇか?」
アーロンにそう言われたハロルドは少し考え込んでから「確かに」と思って頷いた。
なぜだか、いつもよりも比較的穏やかな印象を受ける。以前、同じ村に暮らしていたときも、『弱者としての』ハロルドとペーターを守ってくれていた面はあったので、あまりおかしいとは思わなかった。だが、それにしても横暴さがマシになっている。ギラギラした目をあまり向けられていない。
「ハルのスゴさがやっとわかったんじゃない?」
「ハルのお野菜、サイキョー」
「ふふん、今は特別に食べさせてあげてるだけなんだからぁ」
ローズたちの言葉にハロルドとアーロンだけでなく、他の面々も「絶対違う」と思ったが、黙っておいた。この可愛らしい妖精たちは、見た目に反して結構エグいパワーでぶん殴ってくる。余計なことは言わない方がいいと全員が理解していた。
「なんか、よくわかんねぇヤツだよな。俺はやっぱ嫌いだけど」
アーロンの言葉にハロルドは苦笑する。
正直に言えば、ハロルドだって好きではない。むしろ嫌いだし関わりたくないという気持ちでしかない。
(ただ、なぜかやたらと縁があるよなぁ……)
生まれた村が同じであったり、年齢が近かったり、同じ学校に通うことになったり。
特に追いかけているわけでないのに、いつも近いところにいる。
何か意味でもあるのだろうか、なんて一瞬考えたもののそんなわけないだろうと苦笑する。
フォルテはフォルツァートのことが嫌いだ。その加護を受けたものと故意に一緒にするわけがない。
「弟のことを、家族のことを忘れて、あれは自分の家族じゃないって言い切れるのが信じられねぇ」
「俺たちはペーターと一緒に暮らしているから余計にそう思ってしまうね」
ハロルドにとってみれば、ペーターも家族のようなものだ。だからこそ、ロナルドの言葉を少しばかり皮肉にも感じてしまう。彼らの両親はいい人だった。優しく、穏やかで、誠実な人だった。
それでも、ロナルドが自身の血縁者を『家族』であると思えなかったならば、それはそれで不幸なことであったのかもしれない。
(記憶を受け継いで生まれてきてしまった、悪い影響だな)
少なくとも、ハロルドにとって祖父母がきちんと『家族』だと思える人たちだったのは幸運なことだったのかもしれない。
そんなことを思いながら、「なんか、じいちゃんとばあちゃんに会いたくなってきた」と呟いた。
「夏季休暇に時間作って帰ろうぜ。領地の方にも門?扉だったか?繋げてあるんだろ。向こうにも顔出す必要はあるんだろうけど、ずっとじゃなくてもいいんじゃねぇか?」
「そうだね。美味しい野菜と王都のお菓子も一緒に持っていこうかな」
「そうしろそうしろ。俺も家族の土産を何にするか考えとかないとな」
そう言って二人は笑い合った。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
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コミカライズに関しましては、情報解禁許可が出次第、またお知らせさせてください。
これも応援していただきました皆様のおかげです。引き続き、本作をよろしくお願いいたします。
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