7.食事の違い
「納得できない。何で野菜が美味いんだ……?」
ロナルドはハロルドとアーロンが準備した食事を口にしながら、不可解そうな目でスープを見つめていた。
ロナルドも今世での食べ物が前世のものとは違い、より手に入り難く、貴重な物資であるということはわかっている。なので、好きとか嫌いとかいう理由で無駄にすることはない。しかし、こう思うのは仕方がないだろう。
前世と比べて、味が悪い。
世界中の人々が改良に改良を重ねた美味しいものを口にしてきた現代人の記憶があればこそ、「美味い」とまでは思えない。
それが今世の『食事』だった。
しかし、目の前にあるこのスープはどうだ。
野菜と肉の旨みが最大限に活かされていて、前世と遜色ない、下手をするとそれよりも美味いものだ。
「美味しい……美味しい……。こんなに美味しいものが食べれるなんて、オレ、生きててよかった……」
涙ぐみながら食べている黄暁明には流石にドン引きするが、本当に今まで口にしていたものは何なのかわからなくなる程度には美味い。
「これ、どこの野菜使ってんだ?」
ロナルドは無の表情で肉を焼いているアーロンに声をかけると「ハルが庭で作ったやつ」というぶっきらぼうな答えが返ってきた。あからさまに嫌われていることには気がつくが、それは彼にとってどうでもいい話だ。
「庭で育てるだけでこんなもんができるか?」
「ハルはすごいのよ!」
「植物育てるの、得意。どや」
「アンタにはできないでしょぉ?」
周囲でハロルド自慢を始めた妖精たちを順番に指で弾くと「何すんのよ!」「態度悪い」「サイテー!」と更に騒がしくなる。
(アイツ、よくこんな意味がわからない上にクソウゼェ連中と暮らしてるな……)
キャンキャン騒ぐ声を聞いていると頭が痛くなりそうだ。
ついでに、美味しい植物を育てられるスキルとか英雄から遠すぎる。全く欲しくない。むしろ、絶対いらないスキルだ。そんなものの手腕が上がるくらいならば、少しでも腕力が増すとか、脚力が増すとかの直接戦闘力が上がるスキルの方が欲しい。
(それはそれとして、定期的に買えないか、とは思うな)
ロナルドは知らないが、すでに彼の婚約者はまねきねこ商会に喧嘩を売って取引を拒否されていた。ここまででなくとも、ハロルドの領地で栽培している食物は広がりつつある。
「アーロン、そっちはどう?」
「良さそう」
ロナルドの目の前で、ハロルドとアーロンは互いに作ったものの味見をしている。その足元で、スノウと呼ばれている犬が騒いでいて、白と黒の妖精がつまみ食いをしていた。
「肉!」
「あとでな」
「あとでっていつだよ!」
「切り分けてからってことだよ」
(それにしたってうるさいな……。まぁ、ああいうのを守るのが勇者なんだろうな)
幼馴染とその友人を見ながら、ロナルドはふと、そんなことを思った。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
暁明くんは帰還も兼ねて連れて来られている。彼自身はジニアをハロルドに託す前の、少しばかりのボーナスステージの認識。
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最新4巻は1月25日発売予定となります。
コミカライズに関しましては、情報解禁許可が出次第、またお知らせさせてください。
これも応援していただきました皆様のおかげです。引き続き、本作をよろしくお願いいたします。
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