2.歓迎されぬ勇者
ゆっくりと、確実に迫っている戦いの気配に釣られたのか、勇者であるロナルド・アンモライトもまた近くに現れるようになった。
王家の「来ないでほしい」という願いなど知ったものか、と我が物顔で紛れ込んでいる。
そんな彼は、王族に近い馬車を用意されているハロルドを見つけて近寄ってきた。
「よぉ、ハロルド。いいところに陣取ってんじゃねぇか」
「こんにちは、アンモライト卿。さる高貴な方からの使いで出向くことになりまして」
そう告げるハロルドの困ったような表情から嘘は感じ取れない。だからこそ、ロナルドはハロルドが戦いのために出向くわけではないと信じた。彼は自分の直感には自信がある。だからこそ、生き残っているのだ。
「高貴、な。それはどんなやつなんだ?」
「どんな……。ブチギレてる女性?」
細かいことまで言うのも、とかなり濁した結果、冥神セルピナの説明がかなり雑になった。間違ってはいない。
実際、彼女は「何も言わずに更地にしてもいいのに」と今でも言っている。ハロルドの身体が保たないとユースティアに笑顔で叱られていた。それだって、別に反省していたわけではない。アルスが溜息を吐きながら、「神界もそのうち、戦争になるかもしれないな……」と不穏な言葉を口にしてようやく彼女は表情を変えたのだ。
「いくらお気に入りとはいえ、ただの人間の子だよ!?」
彼女はそう言ったけれど、フォルテもユースティアも、否定をしなかった。
そのことでようやく諦めたのだ。
セルピナも戦争をしたいわけではないのだ。
ハロルドの説明に「なんだ、それ」と呆れたように言うロナルド。
ハロルド自身もそう思うけれど、そうとしか言いようがないので困った顔をするだけである。
少し考え込んだロナルドは、フィアンマ帝国の皇帝を見て「あれか」と呟く。ハロルドが指す人物とは違うものの、彼女もまた怒り心頭なことに違いはない。
「そういや、お前の親父、生きてたんだってな。よかったじゃねぇか」
思い出したようにそう言うロナルドに、ハロルドは眉間に皺を寄せる。
自分の家族を『要らないモノ』と断じた彼には似合わない言葉であると感じた。
「家族は大事にしろよ。いつ会えなくなるとも知らないんだから」
「それは……君にも言える話じゃないかな。おじさんとおばさんが死んだことや、ペーターがこちらにいること。どこまで知ってるんだ?」
「それは、『俺』の家族じゃない。まぁ、死んだのは少しばかり寝覚が悪いけどな。つーか、ペーターって誰だよ」
心底興味がないとでも言うように肩を竦めるロナルド。弟の名前すら覚えていない。
アーロンはロナルドの答えを不快そうに聞くだけだ。
(家族を大事にしてない奴が、どうしてそんな話ができるっていうんだよ。気にくわねぇな)
ハロルドはアーロンとは逆に、腹に落ちるものがあった。
(ああ、そういうことか)
この世界に生まれ落ちて、相応の時が流れても、ロナルドにとって『家族』と言えるのは前世の家族なのだ。
ハロルドは「俺も行くから大船に乗ったつもりでいろよ」と背を向け、ひらひらと手を振るロナルドを見送った。
「あいつ、どういうつもりなんだろうな」
「というか、近くにロナルドがいるのって軽く不安が増すのは俺だけだったりする?」
「ハルだけじゃねぇだろ。みんな帰って欲しそうにしてるじゃねぇか」
二人は顔を見合わせて溜息を吐いた。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
みんな「帰れよ!!」ってなってる。
【お知らせ】
続刊&コミカライズが決まりました!!
最新4巻は1月25日発売予定となります。
コミカライズに関しましては、情報解禁許可が出次第、またお知らせさせてください。
これも応援していただきました皆様のおかげです。引き続き、本作をよろしくお願いいたします。
『巻き込まれ転生者は不運なだけでは終われない 3』2025年7月25日に発売いたしました。
今回もRuki先生にハロルドたちを魅力的に描いていただいております。
書き下ろしもしておりますので、ぜひお楽しみいただけますと幸いです。
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