30.本当ならば言いたくなかった言葉
アンリはハロルドの話を聞きながら、「そうなると、周囲を信頼できる者だけで固めるのが絶対条件となってくるな」と呟いた。
最低限、ハロルドの意識がなくなると考えられる事態である以上、彼を守るための手は多い方がいい。いつもハロルドには王家と遜色ないレベルの警護がついているが、今回は敵地に向かう必要があるため、さらに強い警戒が必要となってくる。
(こうなると、ジョシュやルイが優秀なのはありがたいな)
もし自身に何かあったとしても、彼らが父と共に国を護ってくれるだろう。今の弟たちであればそう考えることができる。
ジョシュアはマリエという『守るべきもの』ができたからか、随分と頼もしくなった。ルートヴィヒもまた、ハロルドたちとの出会いによって自立し、神の加護も得ている。
どこか頼りなかった弟たちだが、今の彼らなら大丈夫だろう。
(むしろ、神の怒りを考えるのであれば、私が動くことが一番リスクが少ない)
ジョシュアがいなくなれば『マリエが不幸になった』とフォルツァートが思う可能性があり、ルートヴィヒは当人が加護持ちだ。
今の王子で一番『価値がない』のは自分である。
アンリはそう考えていた。
ケリーが拐われてしまった時点で、国同士での争いにはもう発展している。
さらに、フィアンマ帝国皇帝カトルが激怒しつつも落ち着いているのは合同で花香に兵を向けることがもう決まっているからだ。神罰のことも、耳に入っているだろう。
最終的には神の怒りによって国は消えるかもしれない。しかし、それはイコール人同士の争いがないということにはならない。
軍を見れば、相手だって戦おうとするだろう。
人の命は、予期せぬ出来事で簡単に消えてしまうものだ。
アンリは痛いほどそれを理解している。
「殿下」
アンリが何を考えたのかがわかったのかもしれない。
友人が厳しい声でアンリを呼んだ。それに苦笑だけを返し、本来、『言いたくなかった』ことを口にする。
「……前にも言ったと思うが、私たちとしては君たちに戦場を見せたくはないんだ」
「「はい」」
二人揃った返事に、アンリは頷く。
この声が届く程度には信頼が残っていることを嬉しく思った。
「本来なら、ハロルドやアーロンのような年齢の者を連れ出すこともしたくはない。しかし、現在の我々に、神に逆らうだけの力はない。
だから、伏して頼もう。
——どうか、私たちを助けてほしい」
そう、アンリが頭を下げた。
ハロルドとアーロンはそれに困惑しつつ、「はい」と返した。
「そもそも、巻き込んだのは俺……というかセルピナ様側だと思いますし」
「そうです。頭を下げるべきはアンリ殿下じゃなくて冥神です」
二人にとっては、それが偽りなき事実だ。
しかし、アンリとしてはそれから彼らを守り切ることができなかったというのも事実だった。
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