29.セルピナの妥協点
アンリにセルピナとの誓約を説明すると、やはり難しい表情をしたままだった.
以前までの望みに比べればだいぶ軟化はしているが、関わる神が増えたせいか大掛かりにはなっている気がした。
「譲歩はここまで、だそうです」
「そうか……」
魔法や神の降臨に詳しい人物を招いて、それをやる危険性について話し合った際、ハロルドがあの花香でセルピナの望み通りに彼女を降臨させ、国を滅ぼすようにした場合、最低でも一年。最悪、数年は眠り続けるだろうという予測が立てられていた。
マーレ王国はドラゴンも住まう魔力に満ちた土地だった。そんな場所でさえ、ハロルドはユースティアを召喚するためにかなりの魔石を用意し、相応の道具をマーレ王国第二王子であるリオネルに用意させた。それだけして、ようやく何の反動もなく召喚することが叶ったのだ。
しかし、花香はそうではない。
魔力の枯れた土地では、ハロルドの魔力とハロルドを守る加護に頼って召喚を行う必要がある。そうなった場合、ただではすまない。
それが、ハロルドと王家が招集した各分野の専門家における最終的な判断だった。
だから、ハロルドもずっとセルピナの妥協点を探していた。
しかし、それは見つからないまま、彼女は主張を変えず、ハロルドも悩んでいた。
それが、フォルテたちを巻き込んだ話し合いに繋がったのである。泣きついた、ともいう。
「もう少し、我々が何とかできる割合を増やして負担を減らしたかったが」
「魔石の提供も含めて、かなり助けていただいていますよ。……あれがないと、流石に俺も寝たきりになりかねませんから」
「そんなことになったら流石に俺も、ブチギレるぞ」
「アーロンはすでに半分くらいキレてるでしょ」
「当然だろうが。神のくせに人に迷惑かけてんじゃねぇよ」
苛立つ気持ちが理解できるだけにハロルドも、アンリも苦笑している。
目の前にアンリがいることを思い出して、アーロンは少しばかりバツの悪そうな顔をする。しかし、目の前に王族がいてもなお許し難い出来事であるという事実は変わらない。
「アーロンと……合流したらブライトも力を貸してくれると思うので、寝込んでも数日くらいに抑えられるでしょう」
手を打ってもやはり消費魔力が大きいが、神たちに相談した結果、パラケルススの研究の中でも神が「隠すべき」と判断した『他者から魔力をもらう』魔道具を貸与されたことでマシにはなった。友人の魔力を奪うことには抵抗があるが、今は手段を選んでいる場合ではない。
(おそらく、一番の『最悪』は俺が死ぬことだ)
ハロルド自身は人生というものは何があるかわからないものだということを身にしみて感じているので、いつ死んでも仕方がないという気持ちはある。
しかし、ハロルドに加護を与えている神や妖精、精霊はそうではない。最近では、周囲にいる人々の反応も含めて考えると、かなり恐ろしい敵討ちが始まる気がしてならない。
(それこそ、戦争になる気がする……)
ハロルドはアーロンにそうボヤいた時に無言で笑顔を向けられたことを思い出して身震いした。
あれは、参加する顔だった。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
「ダチが死んで、報復しないほど、俺は善人じゃねぇぞ」みたいなアーロンと、その言葉に深く頷くだろう他の友人たち。
命は大切にしようね、ハロルド。
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