28.いずれ、それぞれが選ぶ道
ユースティアを巻き込んだことによって、ハロルドは思わぬ効果があったことに喜んだ。
冥神セルピナはハロルドにとって、かなり厄介な神物だった。彼女がおとなしくなるならば、それに越したことはない。さらに、細々とした条件も認めさせることができた。どうやって言い含めようかと頭を悩ませていたハロルドにとって、これだけありがたいことはない。
(今度、ユースティア様の神殿にも色々お供えに行こう)
場を整え、他の神が来ることを許容してくれたフォルテにも何かしなければいけないか、などと考えつつ、ハロルドは王城にて人を待っていた。
テーブルの上に用意されているものを素直に飲んでいるのは、すでに鑑定して『問題がない』ことを把握しているからである。
隣に座るアーロンは少し落ち着かない様子だ。
「なぁ、ハル」
「何?」
「本当に花香に行くのか?」
「神様案件だから、仕方なくね」
ハロルドの言葉に、アーロンは納得しない表情を見せる。
アーロン目線で見れば、『神』という存在はハロルドを守らず、自分たちだけが利益を享受しているように見えた。今回の件だって、神が勝手に動けばいいだけの話であって、ハロルドを巻き込むのはお門違いだと考えている。ちなみに、ハロルドも本当はそう考えているが。
「とはいえ、ブライトを拐うような恐れ知らずだから早めに対処しておきたいのも事実かな。……ペーターがさ、ノアさんに師事しているみたいなんだ」
「……そっちに進むつもりなのか?アイツ」
「うーん……。多分、だけど暗部に就職したいっていうわけじゃないと思うんだ」
苦笑しながら、アーロンから視線を外したハロルドはカップの中をジッと見つめる。
「俺のことが心配なんじゃないかな」
「それはみんなだぞ」
「本当?やっぱり、カラムの提案通り、姿を完全に隠して妖精たちがいるところにでも引きこもっておいた方がいいのかな」
ハロルド個人としては、自分のために道を選ぶ必要はないと考えている。
平和に、平穏に、何事もなく過ごすことができればそれが一番なのだ。だというのに、ハロルドを助けるために戦いに身を投じるというのは、あまり良いことだとは思えなかった。
「まぁ、結局んとこ、自分の道は自分が決めるしかねぇんだけどな」
「それはそうだけど」
心配をしてしまうのは、あのボロボロだったペーターを知っているからかもしれないし、ハロルド自身があまり戦うことを望んでいないからかもしれない。にもかかわらず、争いごとに巻き込まれているのは頭が痛いことだが。
「俺も、色々考えないといけないしな」
アーロンが真剣な表情でそう言ったのと同時に、扉が叩かれた。
それに返事をすると、エドワードが現れてそっと道を開ける。
「ハロルド、アーロン。よく来てくれた」
そう言って柔らかく微笑んだ彼はエーデルシュタイン王国の王太子であるアンリ・シャルル・エーデルシュタイン。友人である第三王子ルートヴィヒの異母兄であった。
「本当ならばゆっくり世間話でもしたいところだが……今はやめておこう。ハロルド、セルピナ様を説得できたと聞いたが間違いはないか?」
「はい」
今回の件は、フィアンマ帝国も絡んでおり少し厄介だ。
だからこそ、彼が直接話を聞きにきた。
ハロルドたちのやることに、責任を持つために。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
国も基本的には本当の本当にハロルドに動いて欲しくない(というか子どもたちの安全を守りたい)ため、「冥神……!余計なことしないでくれ頼むから!!」のお気持ち。
せめて責任は自分たちが取ろうとしている。
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