26.女神様にご相談1
医神アルスは、フォルテの神域を訪ねた。
流石に、ハロルドにこれ以上の負担をかけたいとは思っていない。
そもそも、勝手に神罰の申請を行い、神罰を下せばいいのだ。神の意思に人を巻き込みすぎるのはいかがな事か。
(僕も迷惑をかけている自覚はあるが、セルピナは『それくらい、簡単なことだろう?』とか思っているだろうな!)
冥界に住まう銀髪の女神を思い出しながら、アルスは舌打ちをする。
あの女神にはそういうところがある。ハロルドが転生者であることも、彼女の行いに拍車をかけている気がした。
自分の信者の祈りが届いてようやくハロルドを見たら、かなり疲れている様子だ。少し調べるだけで、どれだけしつこく手伝わせようとしていたかがわかる。
だから、フォルテになんとかさせようと思ったのだ。
「乗っ取りの阻止が関の山ね」
そうしたら、フォルテもまた疲れた顔でそう伝えてきた。
冥界という一つの世界を、一人で維持する女神の力は伊達ではない。それがハロルドの身体を乗っ取って好き勝手するのを阻止するのが限界だった。
「……では、あの男を頼る他ないか?」
「フォルツァートもあの国を見れば『セルピナの行いは妥当』だと考える可能性は高いと思うわ。それだけ行いは酷いから。正直、作物も実らない、動物も育たない、魔力も奪われつつある土地で、ただの人間があれほど生きながらえるとは誰も思っていなかった」
フォルテの言葉に、アルスは顔を引き攣らせた。
それほどの状態だとは思っていなかったのだ。
「多くを犠牲にし、多くを奪ってきたの。私のハルが関わっていなければ応援だってしたほどよ」
「それは……そうだろうな」
しかし、巻き込まれてしまっている。
それゆえに、彼らもまた対応を考える必要があった。
そんな時だった。
空から「フォルテ様」と呼ぶ声が聞こえる。
『相談したいことがありますので、セルピナ様に引っ張られる前にガッと呼び込んで頂けると嬉しいです』
その声に、二人は顔を見合わせた。
次いで、その場にセルピナが居ることは構わないという。呼びたい神もいるので、騒がしくなったらすみません、という内容にアルスは首を傾げる。
「何かしらの解決策でも見つけたのだろうか」
「さぁ?けれど……あの子が来てくれるのだもの。何を用意すれば喜ぶかしら。アルス、あなたも手伝いなさい。忙しくなるわよ」
先程まであからさまに疲れた顔をしていたのに、今のフォルテは生き生きとしている。
アルスはその姿に溜息を吐いて、「わかりました」と返した。こういう時のフォルテに逆らっても、良いことは何一つないのである。
「髪型を変えてみるのも良いかしら」
「ハロルドはそんなもの気にしないと思いますが」
テーブルの位置を変えながらアルスはそう返すが、急に草に足を取られた。
(器用な真似を……!権能がかなり元に戻っているからできることだろうが)
髪型や服を変えるよりも、ハロルドは珍しい野菜、果物、薬草の種をもらえた方が絶対に喜ぶはずだ。アルスはそう思いながら少しだけムッとした顔をした。
(ここに来たら、僕からは以前の花香で栽培されていて今はほとんど絶えてしまった薬草の種をやろう)
フォルテよりも自分の方が友人を喜ばせることができる。そんなことを思いながら、アルスは手伝いを続けていた。
彼もまた、会う気満々である。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
アルス「僕の方がハロルドと仲がいい」
そうか?……そうかも?そうだろうか?
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