21.もう一人の
バケモノ
ブライトは夜間、見張りの目を盗んで連絡用の魔道具を飛ばす。本当ならば使えないものなのかもしれないが、魔力が少ない国の枷などどうとでもなった。
(武器の威力は高いみたいだけど、封じる力が大き過ぎることは想定してなかったみたいだね)
小鳥型の魔道具が視界から消えるのを確認してホッと一息吐く。
目の前の友人父はスピスピと寝息を立てている。神経が図太い。
(ハロルドくんもこれだけ図太ければ人生もう少し楽だったかも)
それはそれで周囲が大変だったかもしれないが、少なくとも今のように死にそうな顔で頑張ることはなかっただろう。
身動ぎすると手枷が擦れる音がする。
「金属音はあんまり好きじゃないなぁ」
昔、家族にこういった拘束具を着けられそうになったことを思い出してそう呟く。
結果的に、それすら壊したので余計に怖がられるだけだったが。
こんなもの、ブライトに取っては枷になり得ない。ただ「無駄なことするなぁ」と思うだけだ。
少しばかり暴れたため、ブライトを見張る目は若干厳しい。しかし、花香の連中は思い違いをしている。
(僕の方を警戒してるみたいだけど、警戒するべきは絶対、そこのおっさんだよねぇ)
確かにブライトと違って非力だ。魔力量だってそう高いとは思えない。撒かれた薬を少量吸い込んだだけでぶっ倒れたあたり、殺そうと思えば普通に殺せるだろう。
しかし、ただそれだけの人物が、後宮で生き残ることができるわけがない。
ブライトが見ている限りでも、すでに彼に甘い人間が数名いる。機嫌を取ろうと、こっそり甘いものを差し入れる者、安心させようと現在の状況を話してくれる者、荷馬車で身体が痛くならないようにと毛布を差し入れる者。
ハロルドはその美しさで周囲を魅了していたが、ケリーにそれだけのものはない。
それでもある種の熱を込めて、狂気を込めて、彼の手助けをしようとする人間がいる。
(あの女帝のお気に入りじゃなかったら絶対殺しておいた方がいいんだけど、お気に入りだからなぁ)
ブライトも戦争がしたいわけではない。
祖父であるガーネット伯爵ならばあるいは戦いに利を見出すかもしれないが、ハロルドが嫌いそうな事態を引き起こすのは本意ではないのだ。
ブライトはハロルドから一応、ケリーの持つ能力については聞いている。
そのジョブスキルは『偶像』。
そこにいるだけで、熱狂者を生むほどの魅力を発する、生きた偶像。
彼のために生き、彼のために死ぬ人間もいるほどのそれが、小さな村で育ったなんてハロルドから聞かなければ誰も信じないだろう。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
ケリーのジョブスキル出した時に当ててきた人いて強く拍手をした。
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コミカライズに関しましては、情報解禁許可が出次第、またお知らせさせてください。
これも応援していただきました皆様のおかげです。引き続き、本作をよろしくお願いいたします。
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