18.善意のストーカー1
「それ、ブライトが危害を加えられた場合、国が神子殿からの信用を無くしそうじゃないか?」
「そうだな。おまえが勝手にやる分には、おまえだけが怒られて嫌われるくらいで済むが、我々が知った時点でみんな信用をなくすな」
「ラムルに逃げ込まれるならまだマシで、妖精の異空間から戻ってこなくなる可能性が一番高いように思うな。私ならそうする」
「ダメかぁ……」
ローウェルとルートヴィヒに相談した結果、しっかり釘を刺されたブライトは唇を尖らせた。
勝手にやったらやったで、怒られるでは済まないので、相談したこと自体は正解だ。しかし、力技で解決できないということはかなりのストレスである。
「ハロルドくんがもう少し残酷であれば、心配要らなかったのかな」
「そうだった場合、我々はそもそも友人にはなれなかっただろう。今のように、周囲に恵まれもしなかったはずだ」
「だよねぇ!ハロルドくんの優しいところ僕大好き!!でもハロルドくんのためにはなってなくて頭痛い!!」
ブライトの言葉に二人は沈黙する。
ハロルドは基本的に優しく、世話焼きで、温厚で、畑仕事を愛する普通の人間だ。
絶世の美貌を持つが、それは本人にとってはデバフになっており、利用しようと考えたことすらないだろう。
それが、なぜか人外に好かれやすく、いつも気苦労を抱えている。ブライトたちからすると、それはハロルドが優しすぎるからだ、と考えてしまうのだ。
本人が聞くと、「俺は一国を滅ぼしてきたんだけど……優しい……?」となるだろう。
そんなこんなでやっぱり対応は決まらない。
はずだった。
しかし、ブライトの様子をずっと見つめる存在がいた。
その少女はうっとりと彼をみながら、殺し合う日を待っていた。殺し合い、互いに実力を確かめ合った上で結ばれたい。そんな欲求を持つ少女は不思議そうに首を傾ける。
「やればいいのに」
神獣である小鳥ごと、襲わせて拐われてみればいいのだ。信頼など腕っぷしで誤魔化しがきく。少なくとも、少女はそうやって生きてきた。
「そうね……小鳥の君ができないと言うのであれば、わたしが手引きして差し上げればいいのです」
良いことを思いついたとでも言うように少女は微笑む。
彼のせいでなければ、神子は彼を咎めないはずだ。そして、とっても役に立った少女にブライトは夢中になる。そんな未来がありありと見える。
正気とは思えぬ思考回路からそう考えた彼女はウキウキしながら姿を消した。
そう、厄介ごとはいつも思わぬところから現れるものだ。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
あかん女があかんことしよる…
【お知らせ】
続刊&コミカライズが決まりました!!
ただいま4巻製作中です。
コミカライズに関しましては、情報解禁許可が出次第、またお知らせさせてください。
これも応援していただきました皆様のおかげです。引き続き、本作をよろしくお願いいたします。
『巻き込まれ転生者は不運なだけでは終われない 3』2025年7月25日に発売いたしました。
今回もRuki先生にハロルドたちを魅力的に描いていただいております。
書き下ろしもしておりますので、ぜひお楽しみいただけますと幸いです。
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