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2.再会と面倒事2




「そもそも、なんで教会がそこまで大きな権限を持っているんですか?」


「昔、フォルツァート神の加護を受けたものが作った教団であり、その教主とやらがやり手だったらしい。その影響が今も残っているんだ」



 ルートヴィヒも全てを知っているわけではないのだと言う。それなりに古い話であるからか、当時のことを知る者もおらず、また現在ではフォルツァートが主神と呼ばれるほどに信仰されていて、他の神の影が薄い。記録も一部消失していて調べるのが難しい。

 国を渡り歩いて、加護を持つ人間を堕落させていく彼らから加護持ちを守るために秘匿する国もあるようだ。この国では、教会が主導で儀式としてスキルの判別などを行っているため隠せないそうだ。取り上げるにも、そのためのアイテムの所持者が教会であり、能力がわからずに大惨事を起こす者も少なからず存在するためにそれもできない。



「だからこそ自分たちを無視はできないだろうと思っているんだ」


「アイテムさえ開発されればいらなくなる組織とか、怖すぎませんか?」


「我が国の場合はバリスサイトの悪夢やらなんやらがあったからな。そういうものの開発が追いついていない面はある」



 他国では段々と肩身が狭くなっているからか、この国でいばり腐っているらしい。そんなことをしても反感を買うばかりでは、と思うハロルドではあったけれど、現実問題として一番に信仰されている宗教はフォルツァート神のものであるし、熱心な信者もそれなりに存在する。



「やっぱり、俺も周囲と結託してでも自分がヤバいやつだってアピールした方がいいのかな?」


「やめておけ。悪いフリをすると、本当に悪い者につけいられる隙になるぞ」



 それもそうだとハロルドは苦笑しながら頷いた。そういうところは前世の世界も今のこの世界も変わらないらしい。食い物にされたくなくてやった行いで自分の首を絞めるのは得策ではないだろう。



「とりあえず、ハロルドが望むように私たちは頑張るだけだよ」


「ご迷惑をおかけします……」


「ハルは悪くないじゃない!!」


「愚か者。醜悪」


「ウチらのハルは渡さないんだからぁ!」



 ハロルドに抱きつく小さな三人の妖精たち。ふんすふんすと気合い十分ではあるのだけれど、当事者の「冷静に、人間の常識の範囲内でね?」という言葉が聞こえているかは微妙だった。

 ハロルドの護衛についている者たちはその様子を見ながら「妖精様は物騒だからなぁ」と目配せしあっていた。埋められたならず者や、焼かれた雇われ冒険者、凍死する羽目になった令嬢。彼らはそれらを見てきたのだから仕方がない。



「俺もローズ・ネモフィラ・リリィに人殺しとかさせたいわけじゃないから、なんとか手出しされずに終わるといいけど」



 すでに手遅れである。



「そういえば、ハロルド宛に手紙を預かっている」



 渡された手紙は三通。

 王太子アンリ。

 その側近エドワード。

 最後に、目の前の友人の妹アンネリース。



「バリスサイトの作物が育ち始めたと聞くからその礼じゃないか?」


「それは俺たち関係ないと思うんですけど」



 同意を求めたアーロンと一緒に不思議そうな顔をする。

 彼らが自分たちが数日だけ滞在していた場所がバリスサイトだと知るのは手紙を読んだ後である。

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