6.助力を請う文
手紙を簡単に要約すれば、「妖精の件で助力を請いたい」ということだった。
簡単に近づけないので矢文を使ったことへの詫びも書いてあったが、アーロンは「正式な手順を踏め」と一蹴していた。
「論外な方法で警備突破してくる人間とか碌なもんじゃねぇ。話聞く価値もないだろ」
「僕もそう思うけどなぁ。そもそも、花香って妖精や精霊に酷いことしてる国だし、罠の可能性もあるでしょ?」
「ミハイル。危険な感じはする?」
「しませんけど、僕も意見としてはアーロンさんと同じです」
「じゃあ放置か……」
ハロルドは一応、自分が勝手な真似をすれば大事になることを理解しているので、若干気になるものの、放置することにした。
とはいえ、またこのように危ない真似をされても困る。当たることはおそらくないが、逸れて誰かが怪我をするとよくない。
「とりあえず、誰かに厳重注意するように伝えて欲しいんだけど……」
ハロルドのその言葉に、アーロンが「大丈夫だと思うぞ」と苦笑をする。
彼にはハロルドが要望を口にした瞬間、指示を出した猫獣人の女性の姿が見えていた。
「あー……、もう頼んでくれたみたいだぞ」
「え、嘘。流石に早くない?」
驚くと同時にちょっと怖かったハロルドだった。
(……残ってるのは本当に一人か?)
少なくとも、ミハイルの直感が働いていないことや、魔眼が反応していないことから、おそらくこの手紙の主に悪意はないのだと思う。
しかし、一人帰らずに残っているということは。
「東宮に着いて『帰らなかったヤツ』、まだいるかもな」
アーロンの呟きに、ハロルドは頷く。
少し調べてみる必要があるかもしれないとルートヴィヒも考え込む。
「そんな悩まなくっても、ハロルドに何かしようとすれば世にも恐ろしい目に遭うだけだと思うのだわ……」
「ハロルドくんはそれで他人が巻き込まれるの嫌がるからねぇ」
「いい子なのだわ」
それだけでいい子扱いもどうかと思ったハロルドは悪くない。彼は自分が特別いい子だとは思っていない。どう考えたって、普通の人間だ。特別善良ではなく、特別悪辣でもない。なのに、神の加護に引き寄せられる者たちや過去の加護持ちがあまりにもやらかすので善の部分が際立ってしまっているだけだ。
「まぁ、ギリギリまで任せとけばいいだろ。俺たちがやるべきは……」
「お勉強ですわー!皆様、そろそろ急がないと学園に来ているのに遅刻しますわよー!?」
少し遠くにいるヴィクトリアに言われて、ハロルドたちは一斉に「やば」と言うような顔で駆け出した。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
体調がすぐれず、間が空いてしまいました……
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