5.その目に見えるもの
学園に着いて、ブライト、ルートヴィヒと合流する一方で、ペーターは「俺、こっちだから」と去っていく。
ペーターはハロルドたちと学年が違うことを少し寂しく思うものの、年齢ばかりは仕方ない。
少し向こうでアンネリースが手を振っている。その耳をゴージャスな金髪の少女が引っ張って校舎へと入っていく。
「王女様相手に耳を引っ張る人いるんだ……」
「あ、ハロルドくんたちは会ったことなかった?さっきの方はパトリシア様のご令嬢で第三王女のドロレス様だよー」
それに驚いた顔をしたハロルドとアーロンはルートヴィヒに目を向けた。
ドロレス・アザレア・エーデルシュタイン。
正妃パトリシアの次女であり、第三王女だ。ややわがままではあるが、美しい容姿をしており、勉強に対して若干の苦手意識はあるもののAクラスを余裕で維持できるくらいには真面目に取り組んでいる。
「アンネもドロレスくらい満遍なく真面目に取り組んでくれればいいのだが……」
「ムラが激しいもんねぇ……。まぁ、今はだいぶ成績上がったんでしょ?」
「植物図鑑や魔法植物で釣ってようやくな」
ルートヴィヒはそう言って溜息を吐いた。兄としては少し思うところはあるらしい。
とはいえ、アンネリースが可愛い妹であることに変わりはない。彼女の将来を心配してのことである。
「まぁ、新種の小麦の研究などでそれなりに成果も出始めているし、それと並行しているのだから大したものか」
「ああ、寒さに強いっていう?俺も気になってて論文を待ってるんだよね」
寒さに強いのなら故郷やマーレ王国でも育てやすそうである。
天候というのは人間が動かせるものではないだけに、気象次第ではハロルドもお世話になるかもしれない。興味津々である。
そんなことを言っている時だった。
ハロルドに向かって矢が飛んでくる。近くに落ちる前に、それをアーロンが掴んだ。
「アーロン、手に怪我は?」
「してない。見えたのも早かったからさすがに強化したよ」
その瞳が金色に光っているのを見て、魔眼が発動していることに気がつく。
「殺意があったわけじゃなさそうだが、弓はあんまり得意じゃなかったみたいだな……手紙ついてるけど」
紙だけを渡されて、ハロルドはそれを広げた。
(一体、あの眼にはどれだけのものが見えるんだろう)
ハロルドの目には危険があるか、ないかしかわからないが、アーロンにはもっと『何か』が見えている気がした。
手紙を開くが、書かれているのは花香の文字のようだった。
「……うーん。妖精、こっちは相談かな?ラムルの文字は薬学都市から論文も取り寄せてるからもう少し読めるんだけど、花香の文字はまだあんまり読めないからな……」
「私が読もうか?」
「うん、ありがとう」
むしろ、ハロルドが少しでも読めることにブライトは驚く。
「ハロルドくん、もしかして完全に趣味のために他国語勉強してる……!?」
「ああ。なんか、読みたい外国語本とかの翻訳待つのがもどかしいらしいぜ。ミハイルに教えてもらってた」
アーロンの言葉に、ブライトは「頑張りすぎじゃない!?」と言った。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
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