24.冥神セルピナ
本日、書籍3巻発売日!
どうぞよろしくお願いいたします。
「セルピナが、加護……!?」
ハロルドが寝る前に神棚にお菓子と共に祈りを捧げると、フォルテはすんなりと夢に現れた。
そして、今回加護を与えてきた神の名を聞くと、心底驚いた顔をした。
「あ、あのとんでも女が、加護……!?」
「とんでも女……」
なかなか聞かない呼び方である。そして驚き方がすごい。ハロルドが美の女神ヴィーナから加護をもらった際も「あの基本男嫌いのヴィーナが!?」と驚いていたがそれを超えている気がした。
「彼女が人に加護を与えるなんて、初めてではないかしら」
「そんなに」
「あの子、基本的には現世に興味がないの。魂とか骸骨とか、冥界に咲く花々は好きなようだけれど」
それがフォルテには変わっているように感じられるのだろう。しかし、その性質がなければ、冥界での暮らしというのはキツイのでは、と思えばそう悪い話には思えない。
「……だからこそ、何か企みはありそうだけれど」
フォルテのその言葉に、やはり少しの嫌な予感がする。
神はそれぞれ個性豊かであり、信仰されるだけの能力を持っている存在である。しかし、全てが人を思いやる神であるというわけではないし、お気に入りを愛してもそれ以外はどうでもいいという存在も割と多い。お気に入りが与えた能力で何をしようと『お気に入り』というだけで許してしまう、そんな神だっている。筆頭がフォルツァートという神だった。
「せっかくフォルツァートが大人しくしているのに、どうして厄介ごとが増えるのかしら」
プリプリと怒るフォルテの後ろから、「問題を起こして神子に迷惑をかける人間を片っ端から殺せばいいじゃないか」と呆れた声が聞こえた。
「やぁ、フォルテ。それから僕の黄金花」
「私の、よ。この子は、私フォルテのものよ」
「ふむ。けれど、僕の方がいいという可能性だってゼロじゃないだろう?」
ニタニタと笑う銀色の瞳が意地悪そうにフォルテを見つめている。きらめくような真白の長い髪が美しい。黒い服は喪服のようにも見えるが、品が良く彼女に不思議とよく似合っていた。
「セルピナ。私も怒ることはあるのよ」
「あはは。怒ることはあるも何も、君は元から感情豊かじゃないか!まぁ、あの阿呆には負けるけど。僕の知らない間に、彼、お人好しに脳筋まで加わって救えない男になっていたな」
フォルテを揶揄って遊んでいるようにしか見えない女性は、ハロルドを見て微笑んだ。
「さて。はじめまして、だね。ハロルド。僕の黄金花」
「えっと……はじめまして」
「僕は冥界の主、冥神セルピナだ。お察しの通り、厄介ごとを頼みにきたよ!」
その言葉に、ハロルドはだいぶ目眩がした。
一番聞きたくなかったセリフだった。
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