28.友人の出迎え
ハロルドたちが妖精たちの力で王城に戻って来ると、ルートヴィヒが軽食の準備をして待っていた。ブライトも楽しそうにしている。
「おっかえりー!」
「ただいま」
「元気そうな顔見るとホッとするわ」
ブンブンと手を振るブライトに、ハロルドとアーロンが手を振りながら返事をすると、その後ろにいるエリザベータを見て思い切り嫌な顔をした。これも相変わらずである。
エリザベータ自身は自分の行いが原因なことは理解しているので、ちょっぴりしょんぼりするくらいである。マシになったとはいえ、暴走する性質なのは変わっていない自覚もあって若干居心地が悪い。
「ごめんね。今はハロルドくん一筋だってわかってるんだけどさぁ、なんかもうね、ね?」
「強烈だった過去は消せないから仕方がないのではないか?」
「今も十分強烈かと」
ルートヴィヒと異母弟ミハイルにまで言われているのを見て、アイマンとペーターは苦笑している。
「確かにエリザベータ様はハロルド大好きだけど、それだけなんじゃないの?」
「この世には知らねぇ方がいいこともあるぜ」
「おれもそう思う」
アーロンとスノウまでそう言うことに少しびっくりした顔をするペーター。彼は本当の暴走状態を知らないのである意味では仕方がないかもしれない。
ハロルドが割と彼女の束縛を気にしないからなんとかなっているだけで、今でも大概だとほとんどの人はそう思っている。
再会は嬉しく思うものの、話さなければならないことがある、とルートヴィヒは空気を変えるために手を叩いて注意を引いた。
「ルビー嬢、侯爵夫妻がお待ちだ。ミハイルとペーターは別室に。アイマンはハロルドの後ろでいい。我々も会議を執り行うぞ。……少々厄介なことがおきそうだからな」
そんな言葉に、ハロルドたちは不思議そうな顔をする。けれど、彼がそう言うということは、本当に面倒なことが起こるのだろう。そう考えて、指示に従うことにした。
そんな中、リリィはひっそりとその場を抜け出した。その後ろ姿に溜息を吐いたルアがルクスに耳打ちをする。
「リリィ姉君を追いかける」
「わかりました。気をつけてくださいね、ルア」
ローズが呪いを受けたことで、自分たちのことをハロルドが心配していることも知っている。だから基本的に、個人行動は控えていた。ルクスが辛うじて単独行動を許されているのは、結界を張りながら行動できるから。それだって、ハロルドはほんの少し、不安そうな顔をする。
そんな中、ビュンと飛んでいくリリィとルアを心配そうに見つめていた。
 




