27.休暇の終わり
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結果発表は2025年2月23日です。
孤児院や街道の視察も終わり、ファビアンとの調整も終わったため、ハロルドたちは帰ることにした。子狐たちが「ずっとココおりぃな」「王都とか行かんでええやん」と足元にしがみついていた。
黄金、白銀コンビはすっかりたまにハロルドがくれるおやつに夢中になっていた。黒金も止めていたが、他でもないハロルドが子どもに甘いため、言うことを聞かず、今までにないくらい双子を叱ることになった。
その結果、「姉ちゃん怖い!ハロルド様のがいい!」「俺も!!」と余計にハロルドに懐く結果になった。ある種、今までの甘やかしの弊害だったかもしれない。
「ほんまにすみません……双子はちゃんと私が見張っときますんで……」
双子を引き剥がしながら、黒金の耳も尻尾もしゅんとしている。
ハロルド的にはマリエの分まで米や味噌をもらっているので別に少しくらいいいか、という気持ちなのだが、子狐たちの行いに危機感を覚えたというならばそれはまぁ、ハロルド以外にやったら思い切り怒られそうなこともあるだろうし、躾はちゃんとした方がいいだろうとも思う。
「えーと、うん。頑張って」
ハロルドは割とアーロンの妹や王都の孤児院の子どもたちのおかげで慣れている。なので別にどうということもないが、とりあえず応援しておいた。周囲にはそれが温情に見えるのも厄介だったかもしれない。
「ああ……珠が言うてたんはこういう……」
黒金の嘆き方を見ながら、アーロンは腕の中でぴちぴち跳ねる神獣を捕まえていた。
「お前の方が生まれて間も無いのに、いい子だな」
「そう思うならおれをはーなーせー!!」
「帰ってからな」
小さいのによく動く。不服そうなスノウだが、目の前にジャーキーを出されると途端に静かになった。アーロンお手製のそれは彼の大好物だった。
「ハル、連れてきてくれてありがとな」
「いきなり何?」
「いや、実際にどうやって仕事してんのかを確認できて助かったからさ」
スッキリした顔のアーロンを見てハロルドは苦笑する。自分が普通の爵位を貰ったばかりの貴族でないことには自覚があった。
「俺では全く参考にならなかったと思うけど……それこそアシェルさんとかシャルロットさんから実家の人に連絡してもらって、その人たちにどんなものか聞く方がいいと思うよ」
「いや、たぶん俺が領主になって求められるのはハルと似たことだと思う。王家にそんな意図はなくても、周囲の貴族や領民は神獣の加護を得た俺に、お前の出した成果を期待するだろ」
「……ああ、確かにそういう懸念はわからなくもないな。俺も加護持ちってだけで結構警戒されてたし、逆もまた、だね」
神によって周囲に及ぼす影響は異なる。
ハロルドとルートヴィヒであれば多少似た効果が出るだろう。同じくフォルテの加護を得ているから。
しかし、他の者に関しては豊穣に関する加護やスキルがないならば似たような効果は出ないだろう。それを周囲に期待され、勝手に落胆される可能性にアーロンは気づいた。
「まぁ、実際向いてないしやりたくねぇもんな」
「それは俺もなんだよなぁ……」
そうのんびりと話している少年たちを見ながら、ファビアンは「そうやって周囲への影響や、自分が求められることについて考えられる時点で将来性を見込んで仕込みたいものだが」と眉間を揉んだ。
世の中、彼らよりも何も考えず生きている人間はそれなりにいるのだ。まだ十代の少年たちは今からもっと伸びるだろう。
「あの子たちは、望めば英雄にだってなれるだろうに」
「そういうの苦手なんだよねぇ。あの子たちがそうなる時が来るとすれば、そうせざるを得ないと判断した時……僕たちでは何もできないような状態だろうね」
アシェルの言葉は「そうならなければいい」という祈りのようだった。




