24.解決?
「え、ジェイド様が片付けしてくれたの?」
「はい。ご令嬢たちが逃げ込んだ先が彼の子爵家だったようです」
その動きを察してアシェルも連絡を取っていたらしい。冒険者ギルドがその地域の領主と連携を取るのはよくある話だが、よその領地の人とも連携を取るものなのだろうか。
(まぁ、事件を解決させるためならやるか)
そんなことを考えながら、「終わったならよかった」とだけ伝えて、庭に作った薬草コーナーに水を撒く。
上空でバチンという何かがぶつかる音が聞こえたファビアンは、落ちていくクックを見ながら「何か設置なさいましたか?」とハロルドに問いかける。
「エリザが作ってくれた光属性の魔法だよ。術者と術者が認めた特定の存在以外を弾く檻のような魔法なんだって」
ハロルドが相談したらすぐに「では、このような魔法はどうでしょうか?」と提案してきたエリザベータはさすが魔導師のジョブスキルを得た者といえよう。
とはいえ、ハロルドがいなくなれば持続が難しいことは予想に難くないのでその対応策も考えてはいる。
(ルイと共同開発してた呪符の応用で、似た効果のものがもうすぐできそうなんだけど……)
問題に関して、ほとんどを他者にぶん投げたおかげで時間が取れたからできたことだ。アーロンも何か考えをまとめ終わった様子であったし、ペーターも今の孤児院を見て安心した様子を見せていた。両親の墓参りもできたようだし、連れてきてよかったのだろうと思う。
「お礼をしておくべきかな。合同で行ってもよかったところをジェイド様が全部片付けてくれた訳だし」
「いえ、ジェイド子爵の奥方が賊と因縁があったらしく、そういったものは不要とのことです」
マシュー・ジェイドの夫人は以前王妃パトリシアの護衛もしていたという剣の達人らしい。その夫人と因縁があるということはよほどヤバい人間だったのだろうかと考える。
実際は親類であるが故にその行いを許すことなどできなかった、という事情なのだが、ハロルドがそんなことを知る由もなかった。夫に離縁まで提案するという、ジェイド子爵家にとってもなかなかの修羅場だった。
「ハル、前の肥料の方がいい〜!絶対絶対ぃ〜!!」
「いいや、ここではこっちの方がいいんだ。まだ試験的な利用だけど、俺が使ってこの程度なら、他の人が使う分には魔物や害獣、害虫は以前より減るし品質も俺が手を入れる前よりは上がるはず。大切なのは飢えさせないこと、だよ。リリィ」
「むぅ……」
土に触れると不服そうに頰を膨らませるリリィに、ハロルドは苦笑する。
土の栄養、中の魔力、そこに育つ植物。ハロルドが管理する超高品質なそれに慣れているからこそ中途半端に彼女の目には映るのだろう。
「俺も王都の畑の方が好きだ」
「僕もです。早く帰りたいですね」
ルクスとルアがそんなことを言うと、ファビアンの眉間に皺が寄った。
「畑の差で好感度が変わりすぎでしょう」
ハロルドと共にいる妖精は、そんなものである。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
ハロルドに引っ付いてる妖精たちには飢えとか獣害とか関係ないので「品質落とすなんて!ヤ!!」って感じ。
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