21.今後のために
少しは可愛らしさも重視したらしい新型の見守りバットくん。
丸いフォルムとそれに合わせた愛らしい目は今までのものに比べると『気持ち悪い』感じはない。
(とはいえ、見られたくない部分を隠せるようにはしたけど)
前と同じように風呂、トイレ、寝る前の自室や隠しておきたいものなどには結界を張ったり、映像を妨害するような魔道具を設置することにする。
婚約者だからと全部を見せたいとは思わないし、全てを暴きたいとも思わない。
性格がこんなに違うのに、案外うまくいっているのはどうしてだろうか。ハロルドは少しだけそんなことを考える。共に旅をした経験で付き合い方に慣れていたからかもしれない。
「ハル、侵入者」
「大丈夫だよ。……もう動いているみたいだから」
ネモフィラの声に周囲の気配を探って、返事をする。
これは特にハロルドを狙ってのことではないだろう。こんな場所にわざわざ足を踏み入れるなんて、相手も運がない。
「悪い人間なのだろう?俺たちで消しても構わないが」
「だからこそ彼らに任せるべきだよ。……あまり手を出しすぎるべきじゃない」
働いてもらってこそ、天秤がどう傾くかわかるというものだ。
「難しいね、色々」
「何にも考えず、ブッ飛ばしてもいいんじゃなぁい?ハルなら何やっても許されるだろうしぃ」
「許されるからこそ、やるべきじゃないんだ」
ハロルドの言葉に訳がわからないという顔をする妖精たち。
ハロルド自身はやはり基本的に、ちゃんと周囲に仕事を振っていく方向性で考えていた。誰も信用も信頼もせず、自分だけを守るのは難しいことではない。だが、それではいけないのでは、と考える。
(今後、俺が離れている時にもきちんと機能する体制でないといけない)
大切なものが増えたからこそ、そう思う。それに、今後現れる加護持ちだって、まともな人間がいるかもしれない。実際、マリエだってまともでないフォルツァートの信者に召喚されたせいで問題を起こしたが、彼女自身は比較的良心的だと言えるだろう。初めから守られていれば、そもそも問題も起こさなかった可能性は高い。近年の聖女とされた人間の悪行がなければ、恐ろしい思いもしなかっただろう。そう考えると不憫ですらある。
守られるべき人間が現れた際には、きちんと守られるべきだとハロルドは思う。
(それはこの世界の人間かもしれないし、俺みたいな転生者かもしれない。マリエさんみたいに召喚されてやってくる人かもしれない)
ハロルドが考えるべきことではないかもしれない。けれど、できるだけ今後の『誰か』が普通の人であるなら、守られるべきだと思う。
「君たちは俺のそばにいて。その方が、俺も安心して眠ることができる」
その言葉に、渋々というように頷く妖精たち。
そんな彼らに、ハロルドは微笑んだ。
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