18.聞き出せたこと
ハロルドが渡した自白剤のおかげで、ある程度事情を聞き出せたらしく、ファビアンが報告にきた。タイミングよくルクスも帰ってきて、ハロルドの頭の上でおやすみタイムに入っている。
「寝ていれば可愛いんだけどな」
「なぜだ。姉君たちならばともかく、我々は特に可愛い形態をしていないだろう」
「……そうだな、悪かった」
不服そうなルアに、アイマンは生暖かい視線を向けた。生まれてそう経っていない妖精といえど、感覚としては『男の子』であるらしい。おそらく、彼らに向けては可愛いではなく、カッコいいといって褒めるべきなのだろう。
「ハルも可愛いと思うのか?」
「まぁ、俺が育てたようなものらしいしね。多分、ずっと可愛いと思うよ」
「……ハルは父のようなものだし、仕方がないな」
自分を無理やり納得させるように、複雑そうな顔でそう言うルア。ハロルドはそんな彼を見て、何だか微笑ましくなった。
ファビアンが咳払いをして、ハロルドたちの意識を自分に向けた。報告のための書類を持って、「そろそろ構いませんか?」と尋ねる。
「構わないよ」
ハロルドがそう言ったことで、「それでは」と聞き出したことを報告し始めた。
「罪人たちが言うには、ある盗賊団が隣の領地を支配している、ということです」
トルマリン子爵が治めていた隣の領地だが、良質な織物が有名な土地だった。水が綺麗で、染料となる植物等が取れることや、職人の腕の良さから近年、高値で取引されていた。
そんな土地にある財産。それに目をつけた者たちがいた。
初めは領民に対し、詐欺や暴力を用いて織物を手に入れていた。しかし、盗賊団の一人が子爵家に入り込んだことで一気に事態は変わる。
「使用人の一人と恋仲になり、子爵家へと手引きさせた男はある嵐の日に同様に扉を開けさせて仲間を引き入れた。結果として、子爵家は……」
「血の臭いでいっぱいでしたよ。乱暴そうな男が、女を侍らせて下品に笑いながら酒盛りをしていました」
ルクスが眠そうに目を擦りながら、そう証言する。場所を知っていたのか、と自分を見るファビアンに肩をすくめながら「嫌いな雰囲気の人間を追いかけたらおっきい家に辿り着いただけです」なんて返す。
「もしかしたら違う家の可能性もありますが……どちらにせよ、その人間は死んでいるでしょう。使用人のせいで死ぬなんて、やはり末端まで管理できていなければ、人は信用できません」
「……一味の首領と思われる人間は、邸内に詳しかったという証言もあることから、内通者がいたことも考えられますがそれはローズクォーツの報告待ちですね」
若干、低くなったルクスの声にハロルドは頭を抱えたくなった。ファビアンも同じように考えているが、真顔のまま続けて報告をする。
(これ、たぶんトラウマになってる……)
「ハル、人間が裏切ろうと俺たちが側にいる。安心しろ」
「うちの子たち、すっかり頼り甲斐のある子になってぇ……」
リリィが嬉しそうにしているが、これがいいことだとは思えないハロルドだった。
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