30.異変
異変を感じとっていたのはアーロン。
それに、両親と共に王城にいたエリザベータだった。
アーロンは一緒にきたメンバーに話しかけて聖堂を出ると、「様子がおかしい」と眉間に皺を寄せて腕を組んだ。
「何が?なんか奇跡みたいな光景だったから、とかじゃなく?」
「なんというか、やけに神官や聖騎士の数が減ってる気がすんだよ。ハルやルイがいる場所の人の気配がいきなりそうなるなんて考えにくい」
とはいえ、今ここで突撃しても良い結果になるとは思えない。アーロンは仕方がないというように制服についたマントを捲る。
「おい、スノウ。ちょっと王城まで連れてってくれ」
「待て待て!なんでスノウをそんなところに仕込んでるんだ」
「帰りに何か食うって聞かねぇから……」
アイマンのツッコミに困った顔をするアーロン。ペーターが「俺、忍び込んでハロルドを見てこようか?」と聞くけれど、アーロンは首を横に振った。
「いや、下手に飛び込んでハルに対する人質になっちまう方がマズイ」
残念ながら、ハロルドは本来妖精たちプラス彼一人という状況が一番強いのだ。圧倒的な魔力と人間の善悪に囚われない妖精たちと共に戦えるとすれば、それは今いないエリザベータやシャルロット等、一部の天才くらいだろう。
大きくなったスノウに乗り込むと、彼らは王城へと向かった。
同時刻、エリザベータは王城にいた。
本当ならばハロルドのいる神殿にいるはずだった彼女だが、両親と共にハロルドに二人目、三人目の婚約者を勧める者たちを押さえ込むための根回しを行っていた。
おかしい、と思ったのはハロルドを見るために放っている覗き見バットくんの通信が途絶えたことだろう。
義父の腕を引いて、「陛下にお目通り願えませんか」と小声で話す。義娘が心配そうな顔をしているのを見て、何とか近づいてくる貴族たちを追い払い、夜会に出ている王へ使いを送る。
(やはり、全て映らなくなっているわ……何が起こったの?)
魔道具は完全ではない。だから障害があることは想定内だ。
だが、一度に全部ダメになるものだろうか?
——胸騒ぎがした。
その瞬間だった。
「緊急事態だ、突っ込め!!」
「いいよ!!」
「いいよじゃねぇ!!」
「わああ、ぶ、ぶつかる!!」
ガシャン、とけたたましい音と共に白い塊が窓ガラスにぶつかって大きな穴が空いた。
「エリザベータ様、ちょうど良かった!コレ、ブッ壊れて落ちてたぞ。……もしかしたらヤベェこと起こってるかも!!」
アーロンの声と伝えられた言葉に、エリザベータの顔色が変わる。それと同時に、王太子アンリが部屋に駆け込んできた。
「何事だ!」
その事で事態は動き出す。
ハロルドとルートヴィヒの行方不明。
そして、光の球体に閉じ込められたローズ以外の妖精たち。
その口から語られた凶行。
冬が近づくこの時期に、国家間でも嵐が巻き起ころうとしていた。




