10.おやつの時間
オーバーラップ情報局公式Xにて、口絵(ハロルド&アーロン、ハロルド&妖精s)が公開されています。ぜひ見ていただけると嬉しいです。
二人は豊穣祭でやることを大体決めてから予算の再確認と、場所決め、必要な人員の調整を行う。
「区画を決めて、軽食も出す?」
「ああ、去年は花の見事さに人が多く集まったしな」
この辺りは珠に投げれば嬉々としてうごいてくれるだろう。そのことを二人は理解していた。
そうやって計画書を作成していると、「ごはん!?」とブランが顔を出した。直後にローズにペシンと額を叩かれている。
「ずっと先のお話よ。ご飯はまだ後」
「そうか。ということは……おやつだな!?」
「アンタ、食べることしか考えてないのぉ!?」
ドヤ顔のブランにリリィが突っ込む。
ハロルドは呑気におやつのことを考えているブランに苦笑しながら、作ったものについて思い出していた。前世で食べた覚えがあまりないマカロンのレシピ。それがジョブスキル錬金術師に付随する能力『パラケルススの秘典』に登録されていた。材料も揃っていたので作って保管している。
異空間収納を開いて、その中からマカロンを取り出すと、ハロルドはテーブルの上にそれを置いた。
「食べる?」
「おやつ!」
ポンと音を立ててブランの姿が幼児サイズに戻る。彼女はいまだにハロルドの目の前では幼児サイズで行動していた。彼が大人よりも子どもに親切なことを知っているからである。
「ルイも食べる?ピンクがいちご、黄色がレモン、この茶色いのがナッツ」
「可愛らしい菓子だな。妹にも少し持って帰っていいか?」
「いいよ」
食に関する大体の材料はまねきねこ商会で集まる。彼女たちは食にとても貪欲だった。故郷の味を自分たちにもたらしてくれたハロルドのことを神の如く崇拝しているので比較的お安めに食材を調達できる。
そのおかげで各国の珍しい食材が、割安で手に入る。料理を振る舞えば信者が増えそうなので、作るのは家の中だけにさせられているが、ハロルドは「俺の料理には別にそんな効果はないよ」とぼやいている。止めた人間が正解である。
「甘い。美味い……」
頰を抑えて幸せそうに食べているブランを見ながら、ルートヴィヒは二セット選んだ後に、茶色いマカロンに手を伸ばした。
「思ったより甘いな。ナッツの香ばしさは好きかもしれない」
「好みに合ったのならよかった」
ハロルドも割と甘いものが好きなので気まぐれにこうやって菓子作りをしている。ちなみに、外で買うのが大体危険なので作っているという面もある。そして、作ったもののほとんどは同居人たちの腹の中に消えていくのであまり外に出す機会がない。
「……やはり、アーロンはともかくあの三人が少し羨ましいかもしれない」
「そう?」
使っている材料にハロルドが作ったものがあるだけに、相当美味しいものが混ざっている。精霊やら妖精が味を占めるだけのことはあった。
(普通だと思うけど、まぁ、可愛い感じのやつだし評判良いからフォルテ様にも供えておくか)
自分で作ったマカロンをつまみながら、ハロルドはそんなことを考えていた。




