9.まさかの理由
「それで、ダンジョンには誰を連れて行くんだ?」
「シャルロットさんとアイマンさん、あとは……なんか、ダンビュライトさん貸してくれるって」
「ダンビュ……ああ、三男の」
「三男の、じゃありませんよ。唐突が過ぎます。説明は」
気がつけば後ろに、尻餅をついたノア・ダンビュライトがいた。痛そうに腰をさすっているものの、音がしなかったのが怖い。
「うちの連中に突然連れてこられたんですが」
「伯爵家の人たち、主家の息子さんの扱い悪くありません……?」
「三男なんてこんなもんですよ、アンバー男爵」
溜息を吐いてジト目となったノアに説明するために、ルートヴィヒの執務室へと向かった。
そして、神様案件に巻き込まれたと理解したノアは頭を抱えていた。まさか、いきなり国と家に仕えている者たちからそんなものを押し付けられるなんて思ってもみなかった。
「……これって断れないやつです?」
「断ってもいいが、断って帰ってからの自分の首を心配した方がいいんじゃないか?」
「そうですよねー!!」
ハロルドが不思議そうに首を傾げると、ルートヴィヒは「お前はなぜかダンビュライト家のお気に入りだからな。警護を断って帰ったら追い出されかねない」という返答をする。それに目を丸くして「そういうの、よくないと思う」とハロルドも頭を抱えた。
「な、なんでそんなことに……」
「最近、皮膚の炎症を治す薬の開発に成功しましたよね」
「ああ、エリザのニキビが痛そうだったから……」
「あれ、余ったからって影の女の子にあげませんでした?」
「あげました」
ハロルドはただ、殺菌作用と肌の保湿・回復を主とした性能をした軟膏を作っただけである。初級身体回復薬の応用だ。鑑定の魔眼があるので、局所的な性能になるような調整ができたがそんなに大したものではない。
ハロルドがレシピも公開してまねきねこ商会でも販売予定がたっている。ただ、やはりハロルドが自作したものはアルスの加護による影響で性能が爆上がりしているので売り出したりできない。
常備薬、エリザベータへの贈り物以外で余ったものは知り合いに渡している。
「あれ、うちの兄貴のお嫁さんで、薬品がかかって結構酷い火傷が腕にあったんだけど」
「治ったのか。よかったな」
「いや、流石に軽い火傷ならまだしも、酷いものは治らないはずだよ」
「だいぶ薄くなっていましたが……」
その言葉にハロルドはぎょっとした。
その後、片手で目を覆い天を仰ぐ。
「そこまでの、効果はないはずだったんだけどなぁ」
一瞬、アルスがピースしている姿が浮かんだ。
なお、彼の想像通り「ハロルドが使った薬草のシナジーは初めて見た!」というアルスのうっきうきな気持ちが薬に反映されてしまった影響が出ていた。
本神は後に「酷い火傷だと中級回復薬以上が必要だと思ったが、初級回復薬に使われる薬草と肌に良いとされる薬草にまさか相互作用が……軟膏の形態にすることで……更に……魔力の影響が……」など長々と楽しそうに話していたという。
オタク特有の早口アルス




