52.子ドラゴンといっしょ2
子ドラゴンを引き取ったハロルド一行は、デイビッドたちと合流して広域魔道結界ミライの外へと来ていた。ジョシュアが付き添っているのは、本人曰く「お使い」である。
子を攫われたドラゴンたちは相変わらず怒り狂って騒ぎ立てている。周囲は酷い有様だ。
(人は王都内に避難させているのと……まぁ、うん。もうドラゴンが襲撃してきた段階でこれに近い感じだったって聞いているからそこまで責任はないんだけど……やっぱり罪悪感がないとはいえないな)
真っ直ぐに王都を目指してきたらしいので、道中に大きな被害がなかったのだけが幸いか。
エーデルシュタイン王国は間違いなく被害者だ。けれど、このドラゴンたちもまた被害者だった。
(頭のおかしい人間のせいで、巻き込まれる人間が多くいる。戦争って案外こういう個人のやらかしから起こるのかもしれないな。まぁ、そういうのって詳しくないんだけど)
気分が悪い、と眉間に皺を寄せて口角を下げる。
自分を落ち着かせるようにゆっくりと息を吐いて、「始めようか」と声をかけた。
ハロルドの声を合図に、デイビッドが声を上げる。なお、その後ろで子ドラゴンたちは心なしか楽しそうにきゅいきゅいと鳴いていた。
「あれは『おーい、ママー!ボクここだよー!』みたいな無邪気な鳴き声です……」
「うん……ドラゴンたちの結界への攻撃も止まったね……」
むしろ楽しそうな子供達に困惑している様子も見られる。
親ドラゴンに向けてアピールするように少し宙へ浮く子ドラゴンもいる。
「あ、なんか彼らが自分で助けてもらったよって話してるので大丈夫そうです」
「それがわかるだけでありがたいよ」
お役に立てずにとか謝りそうだったデイビッドに先んじてそう言っておく。
特にアーロンに懐いているようで、相変わらず頭の上や肩の上に登っている。ただ、腕の中はスノウが独占していた。ちょっとムスッとしているあたりやはりドラゴンたちが気に食わないのだろう。
「それで、マーレ王国から移住させるなら場所はオブシディアン辺境伯領が環境としては最適だと思うのだが」
「ですが、あの場所はマーレ王国に近い。よって取り戻そうとしたやつらに侵攻を受ける可能性もあります」
「元々小競り合いの多い地域だから戦力はある。国力の弱った今のマーレ王国ならば問題はないだろう」
ジョシュアが来たのはこの調整のためだったようだ。
「あと二案あるが、一つはハロルドの領地にある山だな。元は宝石の産出地だったが前の領主が私欲で取り尽くしたせいで人の出入りがほとんどない。魔物はいるが、人は近寄りづらいだろう。もう一つは……」
元ハンベルジャイト伯爵はやっぱりろくなことをしていなかった。なお、その宝石はフォルツァート教会の面々に貢がれた。
ジョシュアの本命は最後の案のようだ。利点などを多く話している。ハロルドも自分で抱え込むよりは王家が受け持ってくれた方がありがたい。
ドラゴンたちとデイビッド、ジョシュアの話し合いの結果は——……。
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