51.子ドラゴンといっしょ1
翌朝、目覚めるとハロルドはアーロンと一緒にドラゴンたちを引き取りに来ていた。相変わらずうるさい。
「でも可愛いんだよな」
「わかる」
すぐそばにはアイマンとシャルロット、エリザベータもいるけれど、ドラゴンが怯えるので小屋の外である。
「もうお別れですの!?」
「もう大きくなった殿下たちや息子たちより可愛いですわ〜!!離れたくありませんわ〜!!」
目にくっきり隈があるのにも関わらず、子ドラゴンを抱きしめてる乳母ーズ。泣かないでーとでも言うように、子ドラゴン軍団もきゅいきゅいと泣き出した。かなりの音量である。
あと、大きくなった殿下たちや息子たちより可愛いは不敬ではないだろうかとハロルドとアーロンはちょっと気になった。
「いや、今更お前たちに可愛いと思われたくはないが」
「ジョシュア殿下!!お久しぶりですわね!!やらかしまくったと聞きましたわよ!!お仕事はきっちりなさいませ!!」
「ええい、やってる!!もう兄上に十分怒られ……気分が悪くなってきた」
突如現れたジョシュアにハロルドとアーロンが首を傾げていると、いきなり顔が真っ青になったので困惑する。
アンリによほど厳しく怒られたのだろう。「兄上、怖い」と呟いていた。
「マーレ王国の国王みたいに夜会で婚約破棄とかしなかっただけマシだとは思いますが」
「しかも結局あのご令嬢、王家に無理やり嫁がされたのでしたわね。気分の悪い話ですわ」
「あそこの国、王族がカスなのですわ!」
「もはや竜の血も薄れて正式な血族でないという噂もありますわね」
親世代では有名な話なのか、そんな話をする彼女たち。ハロルドたちは「貴族も案外口が悪いな。やってることひでーからそうなるのも仕方ねーけど」「やってること、最悪も最悪だもんね」と大人しくその話を聞いていた。
「それで、ハロルド。今回の件が無事に終われば、ミライは閉じていいのだな?」
「え、はい」
「よかった……マリエがそろそろ限界でな。ただでさえほーむしっく?というやつなのに、疲労も溜まっていて可哀想だ。できることならば協力するから、さっさと終わらせてほしい」
エリザベータからも聞いていたが、ジョシュアは結構マメだ。好きな人だから、というのももちろんあるかもしれないが、何かできることはないか、ちゃんと気にかけている。まぁ、恋に夢中になって仕事をサボっていた期間があるのはいただけないが。
「そういえば、発酵スキルの持ち主がいたらしくて、マリエさんのお願いが叶いそうなんだよな」
「何それ」
「いや、豆を育てて量産してほしいってお願いされてただろ?領地はそれなりに広いし、試しに種を撒いて珠さんに管理をお願いしてたんだよね。豊作らしい」
「うん、それで?」
「味噌とか醤油っていうのは作るのにすごく時間がかかるらしいんだけど、発酵スキルの持ち主のおかげで想定よりも早く完成したんだって」
なお、豆が早くできたのはハロルドの肥料の効果もあったりする。それに加えて、今できているものはハロルドの新しいスキル効果も出てきている。めちゃくちゃである。
「お米は秋にならないとできないけどね」
「あの人も問題は起こしたけど、元々教会が呼び出した被害者だからな。ちょっとくらいいい事あってもいいよな。まぁ、またハルを巻き込みやがったら流石に一発殴りてぇけど」
そんなことをのんびりと話している間に、彼らの頭やら肩に子ドラゴンがへばりついている。
普段からスノウや妖精、たまに精霊がへばりついているせいで全然気にしていない。
(ハロルドもだが、アーロンも肝が据わっているというか……)
ジョシュアはちょっと呆れたような目で二人を見ていた。
乳母ーズが言ってるのはデイビッドのお母さんの件




