50.うたた寝のあと
ルートヴィヒが部屋から去ったあと、寝てしまったようだ。
目が覚めたらすでに夜だった。
身体を伸ばすと、少し頭がスッキリした感じがした。
(しっかり寝たはずなんだけど……神降しっていうのは、消耗するものなんだな)
動いていた時よりはマシだ。しかし、気怠さは残っている。
とはいえ、意識のない時に勝手に何かされるよりはいい。
ゆっくりと、次に何をすべきかを考える。
(ドラゴンたちとデイビッドを連れてミライの外へ行き、説得をしてもらう。それで……うん。まぁ、本当の竜王の継承者がこちらにいるのだから、できるだろうな)
有用性があれば、デイビッドがそう簡単に処分されたりもしないはずだ。何かあればハロルドが何とかできるという前提ならば尚更。
ハロルドにとっては、ペーターと同じ、守るべき年下の男の子だった。そもそも、自分が拾った命だ。死んで欲しいとは思わない。ユリウスはちょっと別だが。
「ハル、起きちゃったんですか?何か食べに行きます?」
「こんな時間にわざわざ用意してもらうのも悪いよ。もう一回寝る……けどその前に。ペーターは大人しくしている?」
『筒抜けだぞ、って話しといた。大人しくなった』
ハロルドの腕には6色の宝石が着いたブレスレットがあった。ローズたち妖精みんなと通信するための魔道具だ。
ペーターがやらかしたのはネーヴェの記憶から知っているので、ルアを見張りとして向かわせていた。
知っていたなら止めるか教えろよ、とハロルドは思っているけれど、ネーヴェにとってはペーターやデイビッドなんて路傍の石に過ぎない。だから放置だった。
「ならいいけど……。俺は回復してるのと、勉強はきっちりやっとくように伝えておいてくれる?」
『わかった』
「ありがとう、ルア」
魔力が途切れる直前、「ハロルド!?」という幼馴染の声が聞こえたが、普通に切った。
結果として暴走していたユリウスを捕獲できたのはお手柄だが、別に自分のために誰かが傷つくのをよしとは思えない。
貴族と平民の価値観の差だと思っていたが、これは人間性なのかもしれないと考えを改める。
(大事に思ってくれているのはありがたいけどね)
幼い時の時間全てが悪いものではなかったのだと思える。
翌日にはまた動き回らないといけないだろう。何かあればロナルドを使えとは言ったけれど、本当にそうさせるつもりはない。被害が大きくなる予感しかしない。
「早く全部終わらせてゆっくり寝たい……」
ハロルドはそんな愚痴を溢す。
なお、試験が近いため難しかったりする。
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