49.訪問者
流石に動き続けていると疲れる。ハロルドも病み上がりだ。
用意された部屋で一息吐くと、妖精たちも各々動き出した。それを眺めながら、ソファーに背を預ける。
(やることは多いんだけど……)
面倒でも後片付けはしていかないと禍根を残しかねない。神さえ関わってこなければ、という思いもあるが、起こってしまったことは仕方がない。時は戻せないのだ。
少しだけ休もうと瞳を閉じようとした時だった。
遠慮がちなノックの音が聞こえる。それに返事をすれば、おずおずとルートヴィヒが顔を出す。
「すまない。寝ていたか……?」
「大丈夫、少しボーっとしていただけだから」
振り返って柔い笑みを見せるハロルドに、ルートヴィヒはホッとしたような顔をした。
「疲れた顔をしていたから、ハーブティーを淹れたんだ。どうだ?」
「え、ルイが淹れたの?」
「ああ。ブライトが習っていたのを隣で見ていたら、私の方が先に上達した」
そしてブライトは「じゃあ、もう僕やらなくていいじゃん!」と泣きながらレッスンを受けていた。現在は領主になる勉強をしている彼だが、もともとはその予定がなかったため、将来的にルートヴィヒの下で働く予定で習わされていた。
ちなみに今でも「力をコントロールする訓練」としてやらされている。
「まぁ、できて損する事はないからな」
「確かに」
自分でできれば毒殺の心配も減る。
そんな話をしながらルートヴィヒの持ってきたカップを手に取った。
「俺が作ったものか」
「ああ。ハロルドにもらったものが一番疲れが取れる気がするんだ」
(まぁ、そうなる効果が付与されてるしな)
錬金術師の能力を駆使して調合された茶葉にはうっかり癒しの成分が含まれていた。まねきねこ商会によって販売されているものにはそこまでの効果はないが、ルートヴィヒが持っているのは友人であるハロルドが手ずから作った代物である。特に体に対して悪さをするものではないが、販売分も全部自分で作るなんて絶対に無理なので、友人やお世話になっている人以外には渡していない。売られているのはハロルドのレシピで他の錬金術師・薬師が調合した代物だ。
「目覚めてすぐに走り回るとはな」
「好きでやっているわけじゃないよ。でも、心配かけてごめんね」
「お前が悪いわけじゃない」
苦笑するハロルドに、ルートヴィヒは眉を顰めて否定の言葉を発した。苛立ちが再燃したようだ。
マーレ王国にも、ネーヴェにも「舐めやがってクソが」くらいの気持ちでいるルートヴィヒは、それでもそんな言葉を口に出さないだけいい子かもしれない。
そんなことを考えていると、鼻歌を歌いながらティースプーンを持ってハーブティーを掬っているリリィと目が合った。一瞬、「マズイ!」みたいな顔をしたけれど、すぐにきゅるるんとおねだりするような目に変わった。おねだりに慣れている。
「新しいの淹れようか?」
「ハルたちほどいっぱい飲めるわけじゃないし、ちょっとでいいのぉ。ダメ?」
「君がいいなら俺は構わないよ」
ルートヴィヒはそれを「私がアンネにやられたら鼻ぐらい摘むな」なんて思いながら見ていた。
「ハル」
「ルイが俺をそう呼ぶのは珍しいね?」
ふふ、と笑みをこぼすハロルドに「距離感を測りかねていた」とルートヴィヒは苦笑した。
「私には愛称で呼ぶような友人はいなかったから」
「俺たちだって、愛称で呼んでるんだから嫌がらないよ。そもそも友達なんだから遠慮しなくても」
当然のように口に出した言葉で、ルートヴィヒははにかむように笑った。
ちょっとアーロンとか妖精を羨ましく思っていたルートヴィヒ




