44.できるだけ早く
アーロンたちと交代で入ってきたのはアンリとジョシュアの乳母を務めていた女性たちだった。子ドラゴンを見ながら「腕がなりますわー!」「時間を稼いでいただけたおかげでドラゴンの育成資料もばっちり網羅できましたわー!!」と元気にやってきた。騎士の夫と息子を持つ彼女たちはパワフルだった。
「もう二度とガキの面倒みない!!」
「やらなくてもいいぞって言ったじゃねぇか」
「あんなに大変だって思わなかったもん!!」
スノウがぷりぷり怒っているのを見ながら、アーロンが苦笑している。彼はなんやかんや妹のおかげで耐性があった。
「もう寝る!」と子犬の姿に戻ってアーロンに抱えられた彼は爆速でスヤァと眠りについた。
「代わろうか?」
「いいよ。コイツも頑張ってたのは知ってるし……お前よりは俺のが絶対元気」
「そうよ、ハル。以前、神を身体に降ろした結果、肉体へのダメージが大きすぎて寝たきりになった人もいるのよ」
「……まぁ、俺もアルス様に『フォルテ様の寵愛がなければ命も危うかった』って言われたしな」
それはそれとして、動き回ってないと予想もしない妙な方向からトラブルに見舞われるので、手を打つ他ない。
「ゆっくり寝たい。休みたい。そろそろ穏やかに過ごしたい……」
ちょっと荒んだ目をしている友人を見ながら、アーロンは「そうだよな」と返した。彼も大概巻き込まれている。
今回一番大変だったのは実を言うと「私ならばフォルテ様の加護もあるし、そこの猫もどきの首を斬って、ドラゴンを始末しても許されるのでは?」なんてトンデモ発言し始めたルートヴィヒを宥める作業である。やつはネーヴェもドラゴンも勇者もデイビッドも何一つとして許していない。父親に「妙なところが特出してエヴァに似やがってよぉ……!」と言われて不思議そうな顔をしていた。
(つーか、あのお淑やかな人が、ルイと似てるのか……?)
エヴァンジェリンが王妃パトリシアガチ勢なんて知らないアーロンは、「どっちかって言うと陛下似じゃね?」と思っている。
「さて、マリエさんたちがミライを維持するのもずっと、というわけにはいかない。事態の早期解決に努めようか」
「今回はわたくしが。ハルの、婚約者の、わたくしが!ずっと側にいますわ」
(主張が強い)
アーロンは、腕を組んで嬉しそうにアピールしているエリザベータに「頼りにしてるよ、エリザ」と微笑みすら浮かべるハロルドを「大物だ……」と思いながら遠い目をした。
「エリザ邪魔!」
「ボクのハル」
「ウチもかまってぇ〜!!ウチらだってずっと頑張ってたのにぃ!!」
ハロルドは背中をえらいパワーでぶん殴られているが、笑顔をキープしている。
後ろを向いて「家で、ね?」と小さな声で言われて、やっと落ち着いた妖精たち。
「寝かせてやりてぇなぁ」
「女の子、怖いです」
「ずっとバチバチしてるな」
アーロンと妖精男子組は揃ってハロルドの身を案じることしかできなかった。
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