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17.中間試験と気付いた違和感




 中間試験できちんと勉強をしていたFクラスの面々はホッとしていた。成績が悪ければ、それによって卒業ができなければ力を取り上げられるのだからそれも仕方のない話だろう。

 特にハロルドは成績が良かったため学年主任にこっそり呼び出されて褒められていたりする。その上で、彼が図書室に貸し出し希望を出していた錬金術関連の本を「私のお古にはなるが」ともらうことができた。学年主任は図書室で四人でコツコツと勉強している姿を見ていたので、彼らがお気に入りだった。四人とも成績はそこそこ良い。



「向上心があるのは良いことだ」



 ルートヴィヒも成績が今までになく伸びていて無事「良い子枠」に入っている。分からないことは放っておかずにちゃんと質問に来る。教師からすれば可愛かった。

 また、ルートヴィヒは「王宮よりもまともな授業が聞ける」などと言い出して学園で楽しくやり始めた。なぜか側近などがついていない事を訝しみながらハロルドが「すみません、お宅のお子さんと一緒に勉強してるので帰る時間遅くなります」と送った事で、「なぜハロルドが連絡を?」となり彼に少人数の護衛程度しか人がついていないことが発覚した。



「この状況で離宮にまで手を入れないといけないのか、俺達は」



 真っ青な顔で呟かれた言葉を宰相は同じ顔色で、若干気の毒そうな目で見た。

 賢者が暴れ回った後始末から始まった王位。そして落ち着いたかと思えば勇者が現れ、妨害虚しく聖女まで召喚された。なお、誰が近づけたのか第二王子といちゃついている。


 王であるからこそ必死に民のために働くのが務めである。王妃と側妃もまた同じように駆けずり回っているし、三男であるルートヴィヒは上二人よりは放っておかれた。ある程度、周囲に置く人間には注意したけれど、まさかある程度調査も入った人間が簡単に買収されているだなんて思わなかった。側妃であるルートヴィヒの母が大人しい性格だった事も合わさって母親に似て引っ込み思案なのだろうと思われてしまった。



「俺も早く退位したい」


「そうなれば王太子殿下が過労死寸前から過労死になりますね」


「流石にこの状態を子供に押し付けるクズにはなれん」



 乾いた笑い声が執務室に響く。

 王太子もまた、現時点で仕事に忙殺されている。ほぼ今の状態の時に自分が親から王位を押し付けられたからこそ、逃げられなかった。

 妃の二人にも国内の社交に外交、奉仕活動なども含めた仕事を任せており、無理をさせている自覚がある。元々大人しい性格だったルートヴィヒは親が必死に働いていることを知っているからか、この状態を何も報告しなかった。

 ハロルドに人をつけたからこそ婚約者であるイベリア・マラカイト公爵令嬢の地雷っぷりが明らかになったが、相手は己の息子。王子である。それを馬鹿にするような真似はしないだろうと思っていた。思い切りコケにしてくれたが。



「今のままだと周りが勝手にやった、で末端切り捨てで終わりそうだから泳がすしかねぇよな」


「身の回りをこちらのものとこっそり入れ替えて、正式な証拠を確保でき次第婚約を破棄しましょう」



 問題が増えてため息を吐きながらも、その手は止まらないし、目も書類から離れない。






「試験期間も終わったし、稼ぎに行く?」


「行く。もうしばらく勉強したくねぇわ」



 一方でさらっと友人の状態をその親にバラしたハロルドは、自由の身になったと背伸びするアーロンに苦笑していた。勉強ができること自体は大変ありがたいことではあるが、それは「生きやすくするため」というだけで別に好きなわけではない。



「後期はこれに加えて実技もあるから、引き続き小まめに勉強しておかないと苦労するよ」


「分かってるって。俺だって留年したかないしな」



 余裕ぶっているクラスメイト数人のようにお気楽にはなれなかった。

 ハロルドは引っ越し資金も必要だからと立ち上がった。

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

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